「抵抗」「コンデンサー」「コイル」を使ったフィルター回路〔5〕(L-C)
前回までは、3回ほど「R-Cフィルター回路」について書きましたが、今回からは「L-Cフィルター回路」について書きます。
電源フィルターとしてのR-Cフィルター
前回までの「R-Cフィルター回路」は、振幅や位相が変化する様子をイメージしやすかったと思います。
「R-Cフィルター回路」は、電源フィルターとして使うと、高周波の雑音を小さくしてくれます。
これまで「R-Cフィルター回路」は、電圧源としては交流電圧源だけを描きましたが、実際の電源フィルターのイメージ回路は、下のようになります。

これまで左側に描いていた「交流電圧源」は、電源フィルターでは雑音源です。
本当の電源は、その下の「直流電圧源」になります。
電源フィルターの場合、「電池」が出力する直流電圧は下げずに、雑音だけを小さくしたいところです。
ところが、例えば「抵抗:10Ω」で「電流:100mA」だと、抵抗で「電圧降下:1V」が発生します。
これを避ける方法の一つが、「抵抗:R」を「コイル:L」に変更することです。
「コイル:L」の抵抗値は、理想的にはゼロなので、「電圧降下:0V」です。
一方、「周波数:\(f\) 」が高くなるに従って、「コイルのインピーダンス:\(Z_L\) 」が大きくなります。
「コイルのインピーダンス:\(Z_L\) 」の計算式を下に示します。
$$Z_L=j \omega L=j 2 \pi f L $$
右の「\(j 2 \pi f L\) 」の「\(j\) 」の置く位置を迷いますが、虚数項であることを明確にするために左端に置きました。
この式から、「周波数:\(f\) 」が大きくなると、「コイルのインピーダンス:\(Z_L\) 」も大きくなることが分かります。
それでは次の項で、「L-Cフィルター」の減衰量の計算式を求めます。
L-Cフィルター回路の減衰量
「L-Cフィルター」の回路図は、「直流電圧源」を省くと下記になります。

「波形」や「ボード線図」を描くときには、下記の値を使用します。
・電圧振幅(Vpeak):10V
・コイル(L):10μH(=0.00001H)
・コンデンサー(C):10μF(=0.00001F)
・周波数(f):0.1kHz ~ 1000kHz
「角周波数:\(\omega\) 」などの説明は、「「抵抗」「コンデンサー」「コイル」を使ったフィルター回路〔2〕(R-C)」に書いたので省略します。
ここでも、「入力電圧:\(v_i(t)\) 」、「出力電圧:\(v_o(t)\) 」、「コイルのインピーダンス:\(Z_L\) 」、「コンデンサーのインピーダンス:\(Z_C\) 」の関係は、下の式で表せます。
$$v_o(t)=\displaystyle\frac{v_i(t)}{Z_L+Z_C} \times Z_C$$
この式は、最初に「\(Z_L+Z_C\) 」に流れる電流を「\(\displaystyle\frac{v_i(t)}{Z_L+Z_C}\) 」で計算して、それに「\(Z_C\) 」に掛けて「出力電圧:\(v_o(t)\) 」を求める式です。
それでは上の式を変形し、波形を求める式にしていきます。
フィルターの減衰量は、出力を入力で割ることで求まるので、「\(\displaystyle\frac{v_o(t)}{v_i(t)}\) 」の式を求めます。
$$v_o(t)=\displaystyle\frac{v_i(t)}{Z_L+Z_C} \times Z_C$$
$$\displaystyle\frac{v_o(t)}{v_i(t)}=\displaystyle\frac{Z_C}{Z_L+Z_C}$$
この式に、「\(Z_L=j \omega L\) 」と「\(Z_C=\displaystyle\frac{1}{j \omega C}\) 」を代入して、「虚数:\(j\) 」を含む項と、含まない項に分けていきます。
$$\displaystyle\frac{v_o(t)}{v_i(t)}=\displaystyle\frac{Z_C}{Z_L+Z_C}$$
$$\displaystyle\frac{v_o(t)}{v_i(t)}=\displaystyle\frac{\displaystyle\frac{1}{j \omega C}}{j \omega L+\displaystyle\frac{1}{j \omega C}}$$
右辺の分母と分子に「\(j \omega C\) 」を掛けます。
$$\displaystyle\frac{v_o(t)}{v_i(t)}=\displaystyle\frac{\displaystyle\frac{1}{j \omega C}}{j \omega L+\displaystyle\frac{1}{j \omega C}}$$
$$\displaystyle\frac{v_o(t)}{v_i(t)}=\displaystyle\frac{1}{j^2 \omega^2 LC+1}$$
$$\displaystyle\frac{v_o(t)}{v_i(t)}=\displaystyle\frac{1}{- \omega^2 LC+1}$$
$$\displaystyle\frac{v_o(t)}{v_i(t)}=\displaystyle\frac{1}{1- \omega^2 LC}$$
次は、分母から「\(j\) 」を消す予定でしたが、何もしなくても「\(j\) 」が消えました。
この式を、周波数を変数にして計算することで、フィルターの減衰量と位相差を表すボード線図を描くことができます。
上の式に「\(\omega=2 \pi f\) 」を入力すると下記になります。
$$\displaystyle\frac{v_o(t)}{v_i(t)}=\displaystyle\frac{1}{1- \omega^2 LC}$$
$$\displaystyle\frac{v_o(t)}{v_i(t)}=\displaystyle\frac{1}{1- (2 \pi f) ^2 LC}$$
$$\displaystyle\frac{v_o(t)}{v_i(t)}=\displaystyle\frac{1}{1- (2 \pi) ^2 LC f^2}$$
また、出力波形「\(v_o(t)\) 」を表す式は、「\(v_i(t)\) 」を左辺から右辺に移し、「\(v_i(t)=V_{peak}\sin(\omega t)\) 」と「\(\omega=2 \pi f\) 」を代入して下の式にします。
$$\displaystyle\frac{v_o(t)}{v_i(t)}=\displaystyle\frac{1}{1- (2 \pi) ^2 LC f^2}$$
$$v_o(t)=\displaystyle\frac{1}{1- (2 \pi) ^2 LC f^2}v_i(t) $$
$$v_o(t)=\displaystyle\frac{V_{peak}}{1- (2 \pi) ^2 LC f^2} \sin(\omega t)$$
$$v_o(t)=\displaystyle\frac{V_{peak}}{1- (2 \pi) ^2 LC f^2} \sin(2 \pi f t)$$
次の項では、上の式を使って描いたボード線図と出力波形について書きます。
L-Cフィルター回路のボード線図と入出力波形
最初に、ボード線図の説明です。
「L-Cフィルター回路」のボード線図を下に示しますが、青い線が減衰量を「dB」で表し、赤い線が位相を「deg(度)」で表しています。

横軸は周波数で、0.1kHz~1000kHzまで4桁分になります。
ボード線図を見ると、減衰量を示す青い線が、中央の上方から右下に向けて急傾斜で下がっています。
30kHzと300kHzでの減衰量を見ると、「-10dB@30kHz」と「-50dB@300kHz」辺りを通っており、この傾きを「40dB/dec」とか「12dB/oct」といいます。
「40dB/dec」は、周波数が一桁変化すると減衰量や利得が40dB(100倍や1/100)変化し、「12dB/oct」は、周波数が倍や半分になると、減衰量や利得が12dB(4倍や1/4)変化することを表します。
「R-Cフィルター」の傾斜は一次傾斜でしたが、「L-Cフィルター」の傾斜は二次傾斜になります。
また、10kHzと20kHzの間を見ると、減衰量の青い線が上の枠からはみ出ており、赤い線は不連続に途切れて、位相が「0deg」から「-180deg」に反転しています。
下のボード線図では、グラフの上の端を「10dB」から「40dB」に変更してみましたが、それでも青い線は枠からはみ出ました。

これは、前の項に書いた減衰量の式において、分母の「\(1- \omega^2 LC\) 」がある周波数で「ゼロ」になるためで、その周波数で出力波形の振幅が無限大になることを表します。
その周波数を計算すると、下記になります。
$$1- \omega^2 LC =0 $$
$$\omega^2 LC=1 $$
$$(2 \pi f)^2 LC=1 $$
$$(2 \pi f)^2=\displaystyle\frac{1}{LC} $$
$$2 \pi f=\displaystyle\frac{1}{\sqrt{LC}} $$
$$f=\displaystyle\frac{1}{2 \pi \sqrt{LC}}$$
$$f=\displaystyle\frac{1}{2 \pi \sqrt{0.00001 \times 0.00001}} \simeq 15.915kHz $$
この「L-Cフィルター回路」では、「周波数:15.915kHz」付近で出力振幅は計算上無限大になり、出力波形の位相は一気に180deg遅れて反転します。
それでは次に、その「周波数:15.915kHz」の前後を中心に、「周波数:0.1kHz」から「周波数:1000kHz」の入出力波形の変化について説明します。
まずは、「0.1kHz」と「1kHz」の場合です。


この二つの波形を見ると、「入力波形」と「出力波形」がほぼ重なっています。
上のボード線図を見ても、「1kHz」以下では「振幅」も「位相」もほとんど変化していないので、妥当な波形と思います。
次に「10kHz」の入出力波形を下に示します。

「出力波形」は、位相は変化していませんが、振幅は約1.6倍に増しています。(約+4dB)
次は「15kHz」の入出力波形を下に示します。

左の波形のままだと振幅が分からないので、右の波形は縦軸を5倍にして、「±20V → ±100V」にしました。
これを見ると、振幅は10V→90Vと9倍になっています。(約+19dB)
ただし、位相は変化していません。
次は「16kHz」の入出力波形を下に示します。

これも、このままだと振幅が分からないので、右の波形では縦軸を50倍にして、「±20V → ±1000V」にしました。
これを見ると、振幅は10V→940Vと94倍になっています。(約+39.5dB)
そして位相は、「周波数:15.915kHz」を超えたことで、位相が180deg遅れて反転しています。
次は「17kHz」の入出力波形を下に示します。

「17kHz」の波形は、「周波数:15.915kHz」から約1kHz離れおり、同じ約1kHz離れている「15kHz」と同じくらいの振幅ですが、位相は反転しています。
下の「20kHz」の出力波形は、「10kHz」に近い振幅の波形ですが、こちらも位相が反転しています。

下は「30kHz」の入出力波形ですが、10kHzの違いで、出力波形の振幅は急に小さくなっています。

下は「100kHz」の入出力波形ですが、左の波形だと出力波形の振幅が小さすぎるので、右の波形では縦軸の右側を出力波形専用にして、目盛りを1/25の「±20V → ±0.8V」にしました。

出力波形の振幅は10V→0.26Vに低下し、約1/40になっています。(約-32dB)
下は、「1000kHz」の入出力波形ですが、左の波形では赤色の出力波形はほぼフラットです。

右の波形は、赤色の「出力波形」の縦軸(右側)を1/2500の「±20V → ±0.008V」にした波形で、出力波形の振幅は10V→0.0025Vに低下し、入力波形の1/4000です。(約-72dB)
最初に、『電源フィルターの場合、「電池」が出力する直流電圧は下げずに、雑音だけを小さくしたい』と書きました。
「L-Cフィルター」の場合、「直流電圧は下げずに」は良いのですが、「雑音を小さく」という点では課題があります。
「L-Cフィルター」で、振幅が無限大になる周波数を「共振周波数」といいますが、この「共振周波数」の前後で、出力波形の振幅が入力波形より大きくなる点については改善が必要です。
実際のコイルには、小さいながらも「電気抵抗:\(R\) 」があるので、実際にはここまで出力振幅は大きくなりませんが、「雑音を小さく」したはずが、ある周波数で逆に大きくなっていたときには驚きました。
まぁ、当たり前だったのですが…。
次回は、その「電気抵抗:\(R\) 」がある場合、入出力波形がどう変化するかを書きます。
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