「抵抗」「コンデンサー」「コイル」を使ったフィルター回路〔8〕((R+L)-Cフィルターのボード線図他の作成)
今回は、前回の「ボード線図」や「入出力波形」の作成時に必要となる、Excelで表計算を行う方法をメインに書きます。
前回記事の回路
前回記事の「\((R+L)-C\)フィルター回路」は下記になります。

「ボード線図」などを描くときに使用する値は下記です。
・電圧振幅(Vpeak):10V
・コイル(L):10μH(=0.00001H)
・コンデンサー(C):10μF(=0.00001F)
・抵抗(R):0.1Ω または 1.0Ω
・周波数(f):0.1kHz ~ 1000kHz
ボード線図の作成
まず、「ボード線図」の作成に使用する式ですが、求め方は「「抵抗」「コンデンサー」「コイル」を使ったフィルター回路〔6〕((R+L)-C:計算式)」に書いたので、ここではポイントだけを書きます。
「ボード線図」の作成に必要な「入出力特性」の式は、「出力:\(v_o(t)\) 」を「入力:\(v_i(t)\) 」で割った下の式です。
$$\displaystyle\frac{v_o(t)}{v_i(t)}=\displaystyle\frac{1-\omega^2 LC}{(1-\omega^2 LC)^2+(\omega CR)^2} - j \displaystyle\frac{\omega CR}{(1-\omega^2 LC)^2+(\omega CR)^2}$$
この式の「実数部」は、「\(Re()\) 」を使って下記のように表せます。
$$Re\left(\displaystyle\frac{v_o(t)}{v_i(t)}\right)=\displaystyle\frac{1-(2 \pi f)^2 LC}{(1-(2 \pi f)^2 LC)^2+(2 \pi f CR)^2}$$
同様に「虚数部」は、「\(Im()\) 」を使って下記のように表せます。
$$jIm\left(\displaystyle\frac{v_o(t)}{v_i(t)}\right)=- j \displaystyle\frac{2 \pi f CR}{(1-(2 \pi f)^2 LC)^2+(2 \pi f CR)^2}$$
この「実数部」と「虚数部」の式を使って、ボード線図の「減衰量」と「位相差」の計算式を導きます。
最初に、「減衰量:\(\zeta\) (ゼータ)」の計算式は下記になります。
$$\zeta=\sqrt{Re\left(\displaystyle\frac{v_o(t)}{v_i(t)}\right)^2+Im\left(\displaystyle\frac{v_o(t)}{v_i(t)}\right)^2}$$
上の式は「入力」と「出力」の比率なので、「\(dB\) 」で表すと下の式になります。
$$\zeta(dB)=20\log\left(\sqrt{Re\left(\displaystyle\frac{v_o(t)}{v_i(t)}\right)^2+Im\left(\displaystyle\frac{v_o(t)}{v_i(t)}\right)^2}\right)$$
次に「位相差:\(\varphi\) (ファイ)」ですが、下の計算式で求まります。
$$\varphi (rad)=\arctan\left(\displaystyle\frac{Im\left(\displaystyle\frac{v_o(t)}{v_i(t)}\right)}{Re\left(\displaystyle\frac{v_o(t)}{v_i(t)}\right)}\right)$$
上の式の計算結果は、単位が「\(rad\) (ラジアン)」なので、分かりやすいように単位を「\(deg\) (デグリー) 」にすると下の式になります。
$$\varphi (deg)=\arctan\left(\displaystyle\frac{Im\left(\displaystyle\frac{v_o(t)}{v_i(t)}\right)}{Re\left(\displaystyle\frac{v_o(t)}{v_i(t)}\right)}\right) \times \displaystyle\frac{180}{\pi}$$
この式で計算できる位相の範囲は「\(\pm 90 deg\) 」なので、計算値が「\(-90 deg \Rightarrow +90 deg\) 」に不連続に移行した場合は「\(-180 deg\) 」を加える必要があります。
具体的には、左下のグラフの赤いトレースが、右下のトレースになるように、上に書いたタイミングで「\(-180 deg\) 」を加えました。

逆に「\(+90 deg \Rightarrow -90 deg\) 」に不連続に移行した場合は、「\(+180 deg\) 」を加えます。
他の方法を知らないので、この細工をExcelの表計算に入れました。
それでは、上に書いた式を、Excelの表に入れていきます。
最初に、表計算の上の方の画像を下に示します。

「2~4行」には、計算に使用する値を書いています。
「6行」には、計算する項目名を書いたので、これらの項目を順番に説明していきます。
【周波数:\(f\) 】
左端の「B列」は「周波数(kHz)」で、「7行」に「0.1(kHz)」という数字を入れています。
「8行」以降は、上の値を「1.01倍」しており、下の式になります。

これは、「6~10行」の画像です。
基本的にはこの繰り返しですが、「16kHz」前後で位相差が急変するため、「1.01倍」のきざみだと誤差が目立つことから、今回は「505~781行(13.9~18.3kHz)」を「1.001倍」のきざみにしました。
実際の表計算の式は、下のようになります。
〔1.001倍の始まり〕

これは、「503~506行」の画像です。
〔1.001倍の終わり〕

これは、「780~783行」の画像です。
【減衰量@虚軸】
次は、表の右端に飛んで、「G列」の「減衰量@虚軸」です。
下は「6~10行」の画像です。

「セルG7」の式を、文字列として下に貼り付けます。
=-1*(2*PI()*B7*1000*$D$3*$D$4)/((1-(2*PI()*B7*1000)^2*$D$2*$D$3)^2+(2*PI()*B7*1000*$D$3*$D$4)^2)
この式は、「\(jIm()\) 」から「\(j\) 」を除いた下の式で、上の文字列はExcelのセルにコピペできると思います。
$$Im\left(\displaystyle\frac{v_o(t)}{v_i(t)}\right)=- \displaystyle\frac{2 \pi f CR}{(1-(2 \pi f)^2 LC)^2+(2 \pi f CR)^2}$$
【減衰量@実軸】
次は、一つ左に戻って、「F列」の「減衰量@実軸」です。
下は「6~10行」の画像です。

「セルF7」の式を、文字列として下に貼り付けます。
=(1-(2*PI()*B7*1000)^2*$D$2*$D$3)/((1-(2*PI()*B7*1000)^2*$D$2*$D$3)^2+(2*PI()*B7*1000*$D$3*$D$4)^2)
この式は、下の「\(Re()\) 」の式になります。
$$Re\left(\displaystyle\frac{v_o(t)}{v_i(t)}\right)=\displaystyle\frac{1-(2 \pi f)^2 LC}{(1-(2 \pi f)^2 LC)^2+(2 \pi f CR)^2}$$
【減衰量】
次は、「E列」の「減衰量」です。
下は「6~10行」の画像です。

「セルE7」の式の文字列を下に貼り付けます。
=(F7^2+G7^2)^0.5
この式は、下の「減衰量:\(\zeta\) (ゼータ)」の式になります。
$$\zeta=\sqrt{Re\left(\displaystyle\frac{v_o(t)}{v_i(t)}\right)^2+Im\left(\displaystyle\frac{v_o(t)}{v_i(t)}\right)^2}$$
【減衰量(dB)】
次は、「C列」の「減衰量(dB)」です。
下は「6~10行」の式を表示した画像です。

「セルC7」の式の文字列を下に貼り付けます。
=20*LOG10(E7)
これは、単位を「dB」にするために、「E列」の「減衰量:\(\zeta\) (ゼータ)」の「log」を計算して20倍したものです。
【位相(deg)】
次は「D列」の「位相(deg)」です。
下は「6~10行」の式を表示した画像です。

「セルD7」の式の文字列を下に貼り付けます。
=ATAN(G7/(F7+1E-30))/PI()*180
この式は、「位相差:\(\varphi\) (ファイ)」を、単位「\(deg\) (デグリー) 」で表す下の式になります。
$$\varphi (deg)=\arctan\left(\displaystyle\frac{Im\left(\displaystyle\frac{v_o(t)}{v_i(t)}\right)}{Re\left(\displaystyle\frac{v_o(t)}{v_i(t)}\right)}\right) \times \displaystyle\frac{180}{\pi}$$
本来は「=ATAN(G7/F7)/PI()*180 」ですが、分母が「ゼロ」になるのがイヤなので、分母に小さな数字「1E-30」を加えました。
下は、位相が「\(-90 deg \Rightarrow +90 deg\) 」に不連続に移行する「639~642行」の式を表示した画像です。

背景色が黄色のセルは「641行」で、位相は「640行」の「-89.952deg」から、「641行」の「+89.933deg」へと不連続に移行するので、この黄色のセルから下に「-180deg」を加えました。
これで、「ボード線図」を計算する表ができるので、あとは「「抵抗」「コンデンサー」「コイル」を使ったフィルター回路〔3〕(R-Cフィルターのボード線図作成法)」を参考にすれば、「ボード線図」が描けると思います。
入出力波形の作成
次は、波形の計算式ですが、上の「\(\displaystyle\frac{v_o(t)}{v_i(t)}=\) 」の式を、「\(v_o(t)=\) 」の形にすると、下の式になります。
$$v_o(t) =\displaystyle\frac{1-\omega^2 LC}{(1-\omega^2 LC)^2+(\omega CR)^2}v_i(t) - j \displaystyle\frac{\omega CR}{(1-\omega^2 LC)^2+(\omega CR)^2}v_i(t)$$
途中の計算は、「「抵抗」「コンデンサー」「コイル」を使ったフィルター回路〔6〕((R+L)-C:計算式)」を見ていただくとして、最後の「入力波形:\(v_i(t)\) 」と、「出力波形:\(v_o(t)\) 」の式を下に示します。
$$v_i(t) =V_{peak} \sin(2 \pi f t) $$
$$v_o(t) =\displaystyle\frac{(1-(2 \pi f)^2 LC)V_{peak}}{(1-(2 \pi f)^2 LC)^2+(2 \pi f CR)^2}\sin(2 \pi f t) $$
$$-\displaystyle\frac{2 \pi f CR V_{peak}}{(1-(2 \pi f)^2 LC)^2+(2 \pi f CR)^2} \cos(2 \pi f t)$$
この式の計算を行うExcel表の先頭部分を下に示します。

「2~6行」には、計算に使用する値を書きました。
「8行」が、計算で求める項目なので、順番に説明していきます。
【経過時間:\(t\) 】
左端の「B列」は「経過時間:\(t\) 」で、単位は「\(\mu s\) (マイクロ秒) 」です。
最初の「9行」には「0」を入れます。
「10行」以降は、「セルC5」の「周波数:\(f\) 」の逆数を計算して「周期」を求め、その「周期」を100で割った時間を、順番に加えていきます。
少し分かりづらいと思うので、上の「周波数:\(10kHz\) 」を例に説明します。
① 「周波数」の単位変更「\(kHz\) ⇒ \(Hz\)」: \(10kHz ⇒ 10 \times 1000 = 10000Hz\)
② 「周波数」から「周期」を計算:\(\displaystyle\frac{1}{10000Hz} =100 \times 10^{-6} = 100 \mu s\)
③ 「周期」の1/100の時間を計算:\(\displaystyle\frac{100 \mu s}{100} =1 \mu s \)
この計算に従うと、順番に加える時間は、「\(10kHz\) 」だと「\(1\mu s\) 」になり、「\(100kHz\) 」だと「\(0.1\mu s\) 」になります。
「経過時間:\(t\) 」は、この100で割った時間を加えていくので、「\(10kHz\) 」の場合の「9行」は「\(0\mu s\) 」、「10行」は「\(1\mu s\) 」、「11行」は「\(2\mu s\) 」になります。
表の中の計算式は下記のようになります。

「セルB10」の式の文字列を下に貼り付けます。
=G9+(1/(C$5*1000)/100)*1000000式の右端の「*1000000」は、単位を「\(s\) 」から「\(\mu s\) 」にするためです。
【入力波形:\(v_i(t)=\) 】
次は、「C列」の「入力波形」です。
下は「8~12行」の画像です。

「セルC9」の式を、文字列として下に貼り付けます。
=C$6*SIN(2*PI()*(C$5*1000)*(B9*0.000001))この式は、下の「\(v_i(t)\) 」の式になります。
$$v_i(t) =V_{peak} \sin(2 \pi f t) $$
【出力波形:\(v_o(t)=\) 】
最後は、「D列」の「出力波形」です。
下は「8~12行」の画像です。

式が長いので文字が小さくなり、式が見えないと思いますが、「セルD9」の式の文字列は下記です。
=C$6*SIN(2*PI()*(C$5*1000)*(B9*0.000001))*(1-(2*PI()*C$5*1000)^2*$C$2*$C$3)/((1-(2*PI()*C$5*1000)^2*$C$2*$C$3)^2+(2*PI()*C$5*1000*$C$3*C$4)^2)-C$6*COS(2*PI()*C$5*1000*(B9*0.000001))*(2*PI()*C$5*1000*$C$3*C$4)/((1-(2*PI()*C$5*1000)^2*$C$2*$C$3)^2+(2*PI()*C$5*1000*$C$3*C$4)^2)この式は、下の「\(v_o(t)\) 」の式になります。
$$v_o(t) =\displaystyle\frac{(1-(2 \pi f)^2 LC)V_{peak}}{(1-(2 \pi f)^2 LC)^2+(2 \pi f CR)^2}\sin(2 \pi f t) $$
$$-\displaystyle\frac{2 \pi f CR V_{peak}}{(1-(2 \pi f)^2 LC)^2+(2 \pi f CR)^2} \cos(2 \pi f t)$$
これで、「入出力波形」を計算する表ができるので、あとは「「抵抗」「コンデンサー」「コイル」を使ったフィルター回路〔4〕(R-Cフィルターの入出力波形の描画)」を参考にすれば、「入出力波形」が描けると思います。
もし、不明な点があれば、「お問合せへ」からご連絡ください。
次回は、電源フィルターとして、減衰特性は少し劣化しますが、抵抗での電圧降下が回避できる回路について書こうと思います。
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