「抵抗」「コンデンサー」「コイル」を使ったフィルター回路〔10〕((R//L)-C:ボード線図)

今回は、前回の記事〔「抵抗」「コンデンサー」「コイル」を使ったフィルター回路〔9〕((R//L)-C:計算式)〕で求めた式を使って、「ボード線図」のグラフを描きます。

「(R//L)-C」フィルター回路のおさらい

「ボード線図」を作成する回路と抵抗値などの値は、下記になります。

・コイル(L):10μH(=0.00001H)

・コンデンサー(C):10μF(=0.00001F)

・抵抗(R):0.01 ~ 1.0Ω

・周波数(f):0.1 ~ 1000kHz

ボード線図

作成する「ボード線図」は、横軸が「周波数」で「\(0.1~1000kHz\) 」です。

縦軸は、左側が「減衰量」で単位は「\(dB\) 」、右側が入出力波形の「位相差」で単位は「\(deg\) (度)」です。

「コイル:\(L\) 」と「コンデンサー:\(C\) 」は上の項に書いた値で、「抵抗値:\(R\) 」の値は「\(1000Ω\) 」から「\(0.1Ω\) 」まで小さくしていきます。

それでは、「\(1000Ω\) 」から始めます。

【抵抗値:\(1000Ω\)】

「抵抗値:\(R\) 」の値が「\(1000Ω\) 」の時の「ボード線図」は下記になります。

「抵抗値:\(R\) 」の値が大きいので、下記の抵抗がない〔「抵抗」「コンデンサー」「コイル」を使ったフィルター回路〔5〕(L-C)〕の「ボード線図」と、外観はほぼ同じです。

二つの「ボード線図」の違いは、一つ目は「位相差」の変化が連続か不連続かです。

「抵抗値:\(1000Ω\) 」の場合、「位相差」の変化は急峻ではありますが、「\(0deg\) 」から「\(-180deg\) 」付近まで途切れることなく変化し、最終的には「\(-90deg\) 」に近づいていきます。

「抵抗:なし」の場合、「位相差」は「\(0deg\) 」から「\(-180deg\) 」に不連続に移行し、途中の値はありません。

また、周波数が高くなっても「\(-180deg\) 」のままです。

二つ目の違いは、「減衰量」のプラス側(振幅が大きくなる側)のピーク値です。

プラス側のピーク値は、「抵抗値:\(1000Ω\) 」の場合は「\(+40dB\) (振幅100倍)」ですが、「抵抗:なし」の場合は「無限大」になります。

この回路を、「電源ノイズフィルター」として考えると、「周波数:\(100kHz\) 」での「減衰量」は「\(-30dB\) (振幅1/30)」程度なので、減衰特性は良いと思いますが、「周波数:\(16kHz\) 」付近では「\(+40dB\) (振幅100倍)」とノイズレベルを上げるので、採用しづらい回路と思います。

ちなみに、「位相差」が急峻に変化する周波数は「約\(16kHz\) 」ですが、この周波数を「コイル:\(L\) 」と「コンデンサー:\(C\) 」の共振周波数とすると、その周波数は「\(f=\displaystyle\frac{1}{2 \pi \sqrt{LC}}\) 」で計算できます。

共振周波数は、インピーダンスの大きさが「\(Z_L=Z_C\) 」になる周波数なので、「\(2 \pi fL=\displaystyle\frac{1}{2 \pi fC}\) 」となり、「\(f=\) 」に変形すれば上の式になります。

共振周波数での「コイルのインピーダンス:\(Z_L\) 」の大きさは、下のように計算できます。

$$Z_L =\omega L =2 \pi fL = 2 \pi \displaystyle\frac{1}{2 \pi \sqrt{LC}} L$$

$$Z_L =\displaystyle\frac{L}{\sqrt{LC}} =\sqrt{\displaystyle\frac{L^2}{LC}} =\sqrt{\displaystyle\frac{L}{C}}$$

$$Z_L =\sqrt{\displaystyle\frac{10 \mu H}{10 \mu F}}= 1 \Omega$$

共振周波数での「コイルのインピーダンス:\(1\Omega\) 」に対して、「抵抗値:\(1000 \Omega\) 」は1000倍大きいので、抵抗がないときのボード線図に近い概観になります。

【抵抗値:\(10Ω\)】

「抵抗値:\(R\) 」の値を、100分の1の「\(10Ω\) 」にすると、「ボード線図」は下のようになります。

「位相差」の変化はまだ急峻ですが、「\(-165deg\) 」付近で折り返して「\(-90deg\) 」に近づいていきます。

「減衰量」のプラス側のピーク値は「\(+20.0dB\) (振幅10倍)」なので、「抵抗値:\(1000 \Omega\) 」のときの10分の1ですが、「電源ノイズフィルター」としては、まだノイズを持ち上げすぎと思います。

【抵抗値:\(2Ω\)】

「抵抗値:\(R\) 」の値を、さらに5分の1の「\(2Ω\) 」にすると、「ボード線図」は下のようになります。

「位相差」の変化は少し緩やかになり、「\(-115deg\) 」を過ぎた辺りで折り返して「\(-90deg\) 」に近づいていきます。

「減衰量」のプラス側のピーク値は、「\(+7.17dB\) (振幅2.3倍)」になります。

「周波数:\(100kHz\) 」での「減衰量」は「\(-20dB\) (振幅1/10)」以上なので、減衰特性としてはまずまずと思います。

「減衰量」のプラス側のピーク値は「約\(+7.17dB\) (振幅2.3倍)」ありますが、ノイズの減衰フィルターとして許容できる用途はありそうです。

【抵抗値:\(1Ω\)】

「抵抗値:\(R\) 」の値を、さらに半分の「\(1Ω\) 」にすると、「ボード線図」は下のようになります。

「位相差」の変化は穏やかで、「\(-90deg\) 」を行き過ぎることなく「\(-90deg\) 」に近づいていきます。

「減衰量」のプラス側のピークは「\(+3.33dB\) (振幅1.5倍)」になります。

「周波数:\(100kHz\) 」での「減衰量」は「\(-15dB\) (振幅1/6)」以上なので、減衰特性としてはまあまあと思います。

「減衰量」のプラス側のピーク「約\(+3.33dB\) (振幅1.5倍)」と、「周波数:\(100kHz\) 」での「減衰量:\(-15dB\) (振幅1/6)」を考えると、この辺りが妥協点かもしれません。

【抵抗値:\(0.5Ω/0.2Ω/0.1Ω\)】

「抵抗値:\(R\) 」の値を、さらに小さくした「\(0.5Ω/0.2Ω/0.1Ω\) 」のときの「ボード線図」を下に続けて示します。

「位相差」の変化はさらに緩やかになり、ゆっくりと「\(-90deg\) 」に近づいていきます。

「抵抗値:\(R\) 」の値を小さくすると、「減衰量」のプラス側のピーク値は小さくなりますが、ゼロにはなりません。

「周波数:\(100kHz\) 」での「減衰量」は、順番に「\(-10dB\) (振幅1/3)」、「\(-4dB\) (振幅0.63倍)」、「\(-0.4dB\) (振幅0.95倍)」なので、減衰特性としては用途にもよりますが、もう少し欲しいところかなと思います。

この結果から考えると、今回のコイルとコンデンサーの値の場合、抵抗値は「\(1Ω\) 」くらいがバランスが良いように思いました。

位相の補正方法

今回も「ボード線図」作成に、Excelの表計算機能を使いました。

今回のフィルターでは、「抵抗値:\(2Ω\) 」以上で「位相差」が「\(-90deg → +90deg\) 」に移行していますが、「抵抗値」によって移行する周波数が変化するので、今回は「IF関数」を使いました。

下に、「抵抗値:\(2Ω\) 」のときのExcel画面を貼り付けます。

上の表には、E列の「未補正位相」と、D列の「位相」がありますが、E列の「未補正位相」の値がマイナスの場合は、その値をそのままD列の「位相」にコピーします。

E列の「未補正位相」の値がプラスの場合は、「-180」を加えた値をD列の「位相」に入れます。

下のExcel表は、E列の「未補正位相」の値がマイナスからプラスに移行するときの様子で、530行まではマイナスで、531行からはプラスになっていますが、D列の補正後の「位相」は、「-88.5」から「-90.0」に連続的に変化しています。

下のExcel表は、数式を表示したものですが、「E列」の値が「0未満」のときは「E列」の値をそのまま「D列」に入れて、「0未満」でないときは「E列」の値に「-180」を加えて「D列」に入れる関数になります。

下に、「セルD7」の関数をテキストで示します。

セルD7の数式: =IF(E7<0,E7,E7-180)

この関数は、『「セルE7」の値がもし「E7<0」なら「セルE7」の値を、そうでない場合は「E7-180」の値を「セルD7」に入れる』という指示をしています。

「IF」の条件と、二通りの値は「,(コンマ)」で区切っています。

ここでは、「IF関数」の判定に「E列:未補正位相」の値を使いましたが、「G列:減衰量@実軸」の値を使う方が適切だったかもしれません。

それ以外の計算式は、これまでの記事と同様なので割愛しますが、必要でしたら「お問合せへ」からご連絡ください。

今回まで、「抵抗」「コンデンサー」「コイル」を使用した「電気回路」に関する記事を書きましたが、約4年間かかってしまいました。

以前にも書いたように、「電気回路」はちょっと分かりづらい点がありますが、「電子回路」の前提になる部分も多いので、時間をかけて書きました。

ここで、いくつかの小ネタを挟んで、「トランジスタ」や「オペアンプ」を使用した「電子回路」の記事をこれから書いていく予定です。

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