「2秒で時速700kmに到達」の記事を読んで考えました。
昨年末、「中国国防科学技術大学のリニアモーターカー研究チームは最近、長さ400mのリニアモーターカー試験線路で1t級の試験車両を2秒以内に時速700kmまで加速し、安全に停止させることに成功した。」という記事を見て、少し疑問を感じたので計算してみました。
記事の内容整理
数字に着目して、この記事に書かれている内容を整理しました。
① 2秒間で時速700kmに加速
② 試験車両は1トン級
③ 試験線路は400m
④ 時速700kmに加速後は安全に停止
こんな感じかなと思います。
下は、試験時の画像です。

試験車両(先端が緑色で台車のような形状なので、以下台車と書きます)の質量は、「1トン級」と書かれているので、「1000kg」とします。
試験線路は「400m」で、「加速後は安全に停止」と書かれているので、加速距離と減速距離はそれぞれ「200m以内」と想定します。
この条件で、加速の状況をいくつかのパターンで考えてみました。
加速度が一定の場合
まず、加速度が一定の場合です。
「2秒間で時速700km」なので、秒速で言い換えると「2秒間で秒速194.4m」になります。
換算方法は「\(700km/h=700000m/3600s \simeq 194.4m/s\) 」です。
そうすると、一定の加速度は「\( \displaystyle\frac{194.4m/s}{2s} =97.2m/s^2 \) 」になります。
一定の加速度で加速する様子をグラフにすると、下記になります。

横軸は経過時間で、0秒から2秒です。
青い線は台車の速度で、「加速度:\(97.2m/s^2\) 」の場合、2秒後に秒速194.4mになり、時速だと700kmです。
紫の線は台車の運動エネルギーで、700km/h時の運動エネルギーは下の式で計算できて、「\(18.9MJ\) (メガジュール)」になります。
$$\displaystyle\frac{1}{2} m v^2=\displaystyle\frac{1}{2} \times 1000 \times 194.4^2 = 18.9MJ $$
ちなみに、「エネルギーの単位:\(J\) (ジュール)」は、「\(J = N・m = kg・m^2/s^2\) 」とも表せます。
赤い線は、台車の加速に必要な電力で、変換効率が100%の場合です。
加速を始める直前は0Wですが、2秒後には18.9MW(メガワット)の電力が必要になります。
単位のW(ワット)は「\(W = J/s\) 」とも表せ、「エネルギー」は「仕事」、「電力」は「仕事率」とも言います。
このグラフに、「加速距離」を黒い線で追加すると下記になります。

この条件で、700km/hまで加速するのに必要な加速距離は194mで、「200m以内」になりました。
このことから、おそらくこの試験は加速度一定の条件で行われたと推測します。
ただ、加速度が一定の場合、上のグラフからも分かるように、台車のスピードが上昇するにしたがって、加速に必要な電力が大きくなっていきます。
一世帯の平均電力を仮に1kW(一か月の電力量:720Wh)と仮定すると、18.9MWは1.89万世帯分なので相当大きな電力です。
電力のピーク値を抑えるために、一定の電力で加速するとどうなるかを次に書きます。
電力が一定の場合
一定の電力で加速して、2秒間で700km/h(194.4m/s)にする場合のグラフを下に示します。

上のグラフから分かるように、一定の電力で1000kgの台車を2秒間で700km/hまで加速しようとすると、電力は9.45MW(効率は100%と仮定)になります。
加速度一定の場合に比べて、電力のピーク値は半分に減りました。
このときの加速距離をグラフに追加すると、下記になります。

電力一定の場合、台車のスピードが速くなるに従って加速が緩やかになるため、加速距離が伸びて、200mを超えてしまいました。
加速距離が200m以内になるように、電力を増やしたのが下のグラフです。

加速距離を200m以内にするためには、12.5MWの電力が必要になりました。
ただ、速度が700km/hに達する時間が1.514秒で、2秒よりもかなり早く700km/hになります。
このことからも、やはりこの試験は一定の加速度:97.2m/s²で加速しているのだと思います。
実際には効率が100%ではないので、実際の電力はもう少し大きくなります。
まとめ
この加速試験のニュースを読んだときに、なぜ2秒間で700km/hまで加速する必要があったのか疑問に思いました。
その疑問に対して、「なるほど」と思える投稿がネット上にありました。
この加速試験は、短い滑走路で戦闘機などを離陸させるのに用いる「カタパルト」に関するものではないかという内容です。
昨年の秋頃に読んだ別の記事に、中国が新たに建造した空母は、電磁カタパルトを搭載していると書かれていました。
その電磁カタパルトを、さらに進化させた超伝導電磁カタパルトの試験に成功したということなら納得です。
軍事用途だけでなく、宇宙空間での物資の射出装置などの用途にも活用が検討されているようです。
ちなみに、先ほど書いた一定の加速度:97.2m/s²は、2019年に幕張海浜公園で開催された「レッドブル・エアレース」で、安全確保のために設定されている最大加速度:10Gとほぼ同じなので、人体が許容できる上限に近い値と思います。
そうなるとやはり、空母に使用する超伝導電磁カタパルトが主な目的かもしれません。
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