全波整流波形観測時の失敗談(2)~漏電事故?
今回は、全波整流回路にAC100Vを入力して、その出力波形をオシロスコープで観測しようとして、漏電事故を起こした失敗談を書きます。
全波整流波形の振り返り
前回の「全波整流波形観測時の失敗談(1)~二つの全波整流波形」で書いた内容を、ざっとふり返ります。
下は「全波整流回路」です。

4つの矢印は「ダイオードブリッジ」で、回路図左下の「② AC100V入力(N)」を基準にした入力波形「① AC100V入力(L)」は下記です。

同じ「② AC100V入力(N)」基準の「ダイオードブリッジ」出力波形は下記です。

基準を「④ 全波整流(-)」にすると、「③ 全波整流(+)」出力波形は下記になります。

「抵抗:R」に、平滑用「コンデンサー:C」を並列接続した回路図は下記です。

「コンデンサー:C」を取り付けると、「③ 全波整流(+)」の波形は、下の「⑤ 平滑(+)」になります。

「⑤ 平滑(+)」の波形を簡単に説明すると、上昇時は「ダイオードブリッジ」と通して「コンデンサー:C」に大きな電流が流れ、電圧が急峻に上昇しますが、下降時は「抵抗:R」と「コンデンサー:C」の時定数「τ=RC」で下がります。
この下降電圧は、下の式で表せます。
$$v(t) = 140 e^{-\frac{t}{RC}}$$
「\(t=0\)秒」のときの「\(v(t)\) 」は「\(140V\) 」で、「\(t\)」が大きくなると「\(v(t)\)」は「\(0V\)」に近づきます。
漏電事故の発生
さて、ここからが今回の本題です。
「⑥ 平滑(ー)」を基準にして、「⑤ 平滑(+)」の波形をオシロスコープで観測するため、下の図のように「プローブのGND」を接続しました。

この「プローブのGND」を、「⑥ 平滑(ー)」に接続した瞬間に事件が起きました。
上の図に描いた赤い矢印のルートで、左端のAC100Vの出力をショートに近い状態にしてしまいました。
幸か不幸か、赤い矢印のルート内に壊れやすい部品が入っていて、大きな電流は流れなかったと思いますが、その部品が壊れるまで短時間ですが漏電が発生したはずです。
漏電の説明のため、「一級建築士試験対策室_電気設備_電気配線」というwebページに描かれていた画像を下に貼り付けます。

この図の右下に、二つのコンセントが描かれています。
左のコンセントに全波整流回路を含む製品が接続され、右のコンセントにオシロスコープが接続されていたとします。
オシロスコープの本体は、緑色で描かれた「Earth」に接続されていますので、もし内部の高電圧の配線がオシロスコープ本体に触れても、オシロスコープ本体は高電圧にならず、使用者の安全を確保します。
ただ、「プローブのGND」は、オシロスコープ本体と「Earth」を経由して「② AC100V入力(N)」につながっているので、下の波形でいうと「② AC100V入力(N)」と「④ 全波整流(ー)」がつながったことになります。

緑色で描かれている「Earth」には、通常なら電流が流れませんが、今回のような接続を行うと電流が流れて漏電になります。
この失敗情報は職場で共有しましたが、一年後くらいに他の人も同様の接続をしたようで、「プローブのGND」の配線の被覆が縮れていました。
その人に聞いてみたら、やはり「プローブのGND」を製品に接続したそうです。
配線の被覆が縮れたということは、その配線に大きな電流が流れて瞬間的に高温になったと思います。
いつかは不明ですが、ビルの管理部門の人が、漏電のログが残っていたと調査に来られたことがあったので、そのときに発生した漏電だったのかもしれません。
このことがあって以来、AC100Vにつながっている回路の波形をオシロスコープで観測するときは、「プローブのGND」はどこにも接続せず、2本のプローブの「波形測定部」を使って波形を観測しています。

一般的なオシロスコープには、例えばch1の波形からch2の波形を引き算した波形を表示する機能があるので、基準にしたい部分にch2、波形を観測したい部分にch1の「波形測定部」を接続すると波形が観測できます。
少しノイズが入りますが、フィルター機能などを使えば、それなりに波形観測でがきます。
電源の入力部にしっかりしたトランスがあって、直流的に分離されていれば良いのですが、最近の家電では少数派と思います。
シミュレーション波形との比較
ここからは余談です。
この記事で使った波形は、コピーさせていただいたもの以外はExcelで計算してグラフ化したものですが、この波形が正しいのかを確認するため、「回路シミュレーターの使い方〔1〕」に書いた「LTspice」のシミュレーション波形と比較しました。
まず、「② AC100V入力(N)」基準で、「③ 全波整流(+)」と「④ 全波整流(ー)」の波形です。

左がExcelで作った波形で、右がシミュレーション波形です。
シミュレーション波形の下の図は、シミュレーションに使用した回路図です。
左右の波形を比較すると、同じ波形になっていることが分かります。
次に、「④ 全波整流(-)」基準での「③ 全波整流(+)」波形です。

右のシミュレーション波形には「④ 全波整流(ー)」を描きませんでしたが、「③ 全波整流(+)」の波形が左右で一致しています。
次に、「④ 全波整流(-)」基準で、「⑤ 平滑(+)」の波形です。

ここでも、右のシミュレーション波形に「③ 全波整流(+)」などは描いていませんが、「⑤ 平滑(+)」の波形が左右で一致しています。
最後は、「② AC100V入力(N)」基準の「⑤ 平滑(+)」と「⑥ 平滑(ー)」の波形です。

この波形は、初めて貼り付けますが、左右で異なる波形に見えます。
ただ、左右の波形で一致している点が、二つあると思います。
一つ目は、「⑤ 平滑(+)」と「⑥ 平滑(ー)」の差電圧です。
「⑤ 平滑(+)」から「⑥ 平滑(ー)」を引いた波形は、一つ上に貼り付けた波形なので、左右で一致していることが分かります。
もう一つは、「ダイオードブリッジ」のダイオードのどれかがONしている瞬間の波形です。
その瞬間を、図に表したのが下記になります。

3つの波形を縦に並べましたが、半透明のグレーは「ダイオードブリッジ」が全てOFFしているタイミングで、そのすき間部分がダイオードのどれかがONしているタイミングです。
そのONしているタイミングでは、一番上のExcelの波形と、真ん中のシミュレーション波形の「平滑(+)」と「平滑(-)」の波形は一致しています。
ONしているタイミングでは、「ダイオードブリッジ」を通して「コンデンサー:C」に電流が流れ込むので、その時に一番下の波形の「平滑(+)」の電圧が上昇しています。
「ダイオードブリッジ」がOFFしているときは、「コンデンサー:C」両端の電位差は特定できますが、電位は「ダイオードブリッジ」がOFF状態のどこかは特定できません。
実測した波形が、上のシミュレーション波形に近いか、自分がExcelで描いた波形に近いかも分かりませんが、少なくとも「ダイオードブリッジ」がONした瞬間は上のすき間の波形になります。
ちょっと分かりづらいと思いますが、波形を見るときは、どこを基準にしているかを明確にすることは大切と思います。
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