電池の並列接続を掘り下げてみます。

「小学5年生より賢いの?」の問題に出てきた電池の並列接続を見て、少しモヤモヤした気持ちになりました。

この投稿では、どうして電池の並列接続でモヤモヤするのかを書いてみます。

それでは最初に、並列接続する2本の乾電池の出力電圧と内部抵抗を想定してみましょう。

乾電池の出力電圧は公称値:1.5Vですが、実際には初期電圧が1.6Vくらいあります。

今回は電池の出力電圧が1本目を「E₁=1.55V」、2本目を「E₂=1.60V」と想定して話を進めます。

電池の内部抵抗は、今回は2本とも0.45Ωとして「r₁=r₂=0.45Ω」とします。

最初に、内部抵抗がない場合を考えてみます。

下に電池の内部抵抗がない場合の回路図を、ちょっと無理をしているところはありますが描いてみます。

電池のE₁とE₂を一定の電圧を出力する「定電圧源」とすると、電池間の電圧差は0.05Vで小さいのですが、二つの電池は0Ωの抵抗で接続されているので流れる電流は「0.05V÷0Ω」で求められるので、無限大に大きな値になります。

ただ、これは電池が理想的な「定電圧源」と考えた場合の話で、実際の電池には内部抵抗があり、電池は電流を吸い込む能力があまり高くないと思いますので、電流が無限大になることはありません。

豆電球に加わる電圧は、おそらく1.60V寄りの電圧になり、豆電球に流れる電流は0.32A弱になると考えられます。

ただ、本当にまずいのは、E₁の電池には充電方向の電流が流れるので、電池が充電タイプではない場合は電池の内部でガスが発生して電池内部の圧力が高まり、電池の安全弁が開いて電池内部から電解液が漏れ出すなどして電池が使えなくなることが考えられます。

電池から流れ出した電解液は、金属を溶かしたり人体にも有害な物質なので、きれいに拭き取ったり洗い流したりする必要があります。

それでは次に、電池の内部に抵抗があることを想定した場合を考えてみます。

下に電池の内部抵抗をイメージした回路図を描いていますが、この回路の「I」「i₁」「i₂」をそれぞれ求めてみようと思います。

前回の「小学5年生より賢いの?を見て思いました。」の投稿では、電池の電圧:E₁、E₂は同じ電圧としたので、電池の出力電流:i₁、i₂も同じ値でした。

今回、E₁とE₂は異なる電圧値としていますので、i₁とi₂も異なる電流値になります。

それでは、この回路のI、i₁、i₂を計算で求めてみます。

計算で求める値が3つあるので、計算式も3つ必要になります。

まず電流:Iは、上の回路図から電池の出力電流:i₁とi₂の足し算になることが分かるので、下記の式が成り立ちます。

 I=i₁ +i₂   ・・・ ①

次にE₁の電圧値は、上の回路図から内部抵抗:rで生じる電位差:r×i₁と、豆電球の抵抗:Rで生じる電位差:R×Iを足したものだと分かるので、下記の式が成り立ちます。

 E₁=ri₁ +RI ・・・ ②

E₂の電池に関しても同様に下記の式が成り立ちます。

 E₂=ri₂ +RI ・・・ ③

この3つの式からI、i₁、i₂を求めます。

いろいろの方法はあると思いますが、今回は最初に②の式の両辺から③の式の両辺を引いて、RIを消してみます。

 E₁ ー E₂ =ri₁ +RIー(ri₂ +RI)=ri₁ーri₂ =r(i₁ーi₂)

もうここで、数値を入れてしまいましょう。

 1.55 ー1.60 =0.45(i₁ ーi₂)

 -0.05/0.45 = i₁ ーi₂

 i₂ = i₁ + 1/9 ・・・ ④

④と①の式を③の式に代入し、③の式をi₁だけにします。

 E₂=ri₂ +RI

 1.60 = 0.45 (i₁ + 1/9)+ 5.0(i₁ + i₁ + 1/9)

 1.60 = 10.45i₁ +(0.45 + 5.0)/9

 10.45i₁ = 1.60 ー 5.45/9

 i₁ =(1.60 ー 5.45/9)10.45 = 0.095162‥ ≒ 0.0952

④の式にi₁の値を入れて、i₂を計算します。

 i₂= i₁ + 1/9 = 0.095162‥ + 1/9 = 0.206273‥ ≒ 0.2063

最後に①の式に、i₁とi₂の値を入れます。

 I= i₁ + i₂ = 0.095162‥ + 0.206273‥ = 0.301435‥ ≒ 0.3014

それでは上で求めたi₁、i₂、Iの値を、単位を「mA」にして回路図に入れてみます。

E₁に流れる電流とE₂に流れる電流には大きな差がありますが、これなら特に問題はありません。

それでは次に、豆電球と電池の間にスイッチを追加してみます。

そのスイッチをOFFにして豆電球を消灯させたとします。

回路図にすると下のようになりますが、この回路で電流がどのように流れるかを計算してみましょう。

この回路で新しく式を立ててもよいのですが、せっかくなので上で使用した式を再利用します。

今回は、下の①と④の式を再利用して計算してみましょう。

 I =i₁ + i₂   ・・・ ①

 i₂ =i₁ + 1/9  ・・・ ④

スイッチをOFFにしているので「I= 0mA」になるので、これを①の式に入れます。

 0 = i₁ + i₂

 i₂ = -i₁

これを④の式に入れて、i₁の値を求めてみます。

 i₂ = i₁ + 1/9

 -i₁ = i₁ + 1/9

 -2i₁ = 1/9

 i₁ = -1/18 = 0.055555‥ = ー55.6mA

i₁を計算で求めた値が「マイナス」なので、電流の流れる方向が矢印の向きとは逆になります。

i₂ = -i₁ なのでi₂は「プラス」になり、矢印の方向に55.6mAの電流が流れることになります。

この計算結果を反映した回路図を下に示します。

まあ、こんな計算をしなくても電池の電圧差が0.05Vなので、これを二つの電池の内部抵抗を合計した抵抗値で割り算すれば、0.05V/(0.45Ω+0.45Ω)= 0.055555‥となり、55.6mAが求まります。

でも、せっかくなので上で使用した式を使って求めてみました。

この結果を整理すると、電池を並列接続して豆電球のスイッチをOFFにすると、電圧の高い電池から電圧の低い電池に電流が流れることが分かります。

スイッチをOFFしているのに、電圧の高い電池から電流が流れることも問題ですが、もっとまずいのは電圧の低い電池に電流が流れ込むことです。

最初の方に書いたように、電流が逆方向に流れ込むことで電池内部の圧力が高まって液漏れなどが発生する可能性が高くなります。

もし、二つの電池の出力電圧差が大きいと、豆電球をつないでいても電圧の低い方の電池に電流が流れ込る場合もあります。

これらのことから、電池の並列接続を見ると「大丈夫なのかな」と不安に気持ちになります。

電池の並列接続は、クイズの問題などにとどめて実際には行わない方が良いと思います。

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