トルクと回転数と出力(馬力/仕事率)と位置エネルギーのはなし(1)
そのうち書きたいと思っていたネタです。
トルクと回転数から、位置エネルギーを使って出力(馬力/仕事率)を計算してみようと思います。
この投稿は、トルクとか回転数という単語を聞いたことがあるくらいの方を対象に書かせていただこうと思います。
トルク、回転数、出力(馬力/仕事率)というと、やはり自動車のエンジンを思い浮かべます。
今回は、一回目としてトルクの話を書こうと思います。
自分が最初にトルクという言葉を見たのは、やはり自動車を購入するときに見た下のようなグラフだったと思います。
このグラフの左側に書かれている「出力」というのがエンジン出力で、「PS」という単位は「馬力」のことです。
ここで、馬力の単位は「HP(House Power)」ではと思われる方もおられると思います。
こちらの馬力の単位「HP」の方が語源としては分かりやすかったのですが、この単位は「フィート」や「ポンド」という単位で定義されているので、イギリスやアメリカで使用されていて、日本の計量法では採用されていません。
馬力の単位として日本の計量法で採用されているのは「PS」で、語源はドイツ語の「Pferde(馬)Stärke(力)」です。
なんと発音するのかは、ちょっと分かりませんが・・。
「PS」は「フィート」や「ポンド」ではなく、「メートル」や「キログラム」で定義されているので、ドイツや日本で使用されています。
わき道にそれましたが、今日はトルクの話なのでグラフの左側の話はこれくらいにして、右側に書かれている「トルク(kgm)」の話を書きます。
ここに書かれている単位「kgm」はよく見かけるトルクの単位なので、こちらも間違いでは無いと思いますが、正確に表現すると「kgf・m」になると思います。
「kgf」は、ちょっと前の投稿『「力」と「エネルギー」の単位』に書きましたが、過去には「kg重」とも言われていた力の単位です。
質量1kgの物質を手に持ったときに手が受ける力が「1kgf」です。
『「力」と「エネルギー」の単位』の投稿に書いたように、この力の単位は現在では「N(ニュートン)」が主流で、1kgf = 1kg × 9.8m/s² = 9.8kgm/s² = 9.8N(ニュートン)になります。
「kgf」の「f」は重力加速度で9.80665m/s²と定義されていますが、他の単位との換算などを考えると、やはり力の単位は「N(ニュートン)」の方が便利と思います。
ただ、「kgf」の方がどの程度の力なのかイメージしやすいので、他の単位への換算を考えないときには「kgf」を個人的にはよく使います。
さて、再び「トルク」に話を戻します。
「トルク」の身近な例として、ペットボトルのキャップの絵を描いてみました。
キャップを外すときには、普通は親指と人差し指の2本の指でキャップを持って回すと思います。
この絵は、指1本あたり1kgfの力をキャップの黄色い矢印の方向に加えて外していると想定した絵です。
キャップの直径は2cmとしましたので、キャップの中心からの距離は1cmです。
このときのトルクは、回転の中心軸からの距離:1cmと、1cmのところに加えた力:1kgfの掛け算で求まりますが、2か所に力を加えているので、トルクは2倍になります。
これを計算すると、下記になります。
キャップに加えたトルク = 1kgf × 1cm × 2 = 2kgf・cm = 0.02kgf・m
これを「N(ニュートン)」で表すと下記になります。
0.02kgf・m =(0.02kg × 9.8m/s²)・m =(0.196kgm/s²)・m =0.196N・m
この例は、回転物に外から力を加えたときのトルクですが、エンジンやモーターの場合は、逆に回転物から周囲にあるタイヤや扇風機の回転羽根などに力を加えますが、その力もトルクとして表せます。
ちなみに今回のペットボトルのキャップの例は、回転軸から1cmの位置に1kgfの力を加えた場合ですが、0.01kgf・mをそのままイメージすると、回転軸から1mの位置に10gf(=0.01kgf)の力を加えたことになります。
1m離れると、1cmのときに比べるとずいぶん小さな力で済みますね。
次回は、トルクと回転数からエンジンの出力を「W(ワット)」で求めてみようと思います。
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