トルクと回転数と出力(馬力/仕事率)と位置エネルギーのはなし(2)

(1)の投稿はトルクをメインに書きましたが、今回はトルクと回転数から出力パワー(仕事率:ワット)を計算してみます。

まずはエンジンと、その回転軸に取り付けた円盤の絵と、エンジンの性能例のグラフを下に示します。

エンジンに取り付けている円盤には外周に溝が入っていて、ヒモで荷物を巻き上げることができるイメージです。

右のグラフは、縦軸が出力パワー(PS)とトルク(kgm ⇒ kgf・m)で、横軸がエンジンの回転速度(rpm ⇒ 1分間当たりの回転数)になっています。

最高出力のところに赤い線を引きましたが、グラフから「最高出力パワー」「トルク」「回転速度」の値を読み取りました。

・最高出力パワー:119 PS(馬力)

・最高出力時のトルク:13.4 kgf・m

・最高出力時の回転速度:6360 rpm(回転/分)

この最高出力パワーを、トルクと回転速度から計算してみます。

今回計算するのは馬力(PS)ではなく、仕事率(W:ワット)までにします。

先ほどの円盤に、ヒモと巻き上げる荷物の絵を描き加えました。

上のグラフから読み取ったトルクが13.4kgf・mだったので、円盤の中心軸から1m離れたところにヒモがあり、その下に13.4kgの質量の荷物が吊り下げられているイメージです。

次にこれを巻き上げるイメージですが、1秒間に何m持ち上げられるかを計算してみます。

まずは、円盤が1回転すると荷物が何m持ち上がるかを計算します。

これは、円盤の円周の長さを計算すればよいので直径×円周率です。

直径は半径の2倍なので、2rとπ(パイ:円周率)を掛けました。

これに1秒間の回転数を掛ければ、1秒間に何m持ち上げられるのかが分かります。

まず回転数ですが、回転速度は6360 rpmなので1分間に6360回転します。

1分は60秒なので、60で割り算すれば1秒間当たりの回転数が分かります。

1秒間当たりの回転数 = 6360(回転/分)÷ 60(秒/分)= 106(回転/秒)

円盤が1回転して持ち上がる高さと、円盤の1秒当たりの回転数を掛け算して、1秒間で荷物を何m持ち上げられるかを計算します。

13.4kgの荷物を1秒間に持ち上げる高さ = 2rπ(m/回転) × 106(回転/秒)= 666(m/秒)

このエンジンは、13.4kgの荷物を1秒間に666mも持ち上げられるんですね。

計算上ですが、たった1秒で東京タワー2本分の高さまで13.4kgの荷物を持ち上げるとは、すごいパワーです。

それでは次に、このエンジンの仕事率(W)を求めます。

「位置エネルギーの単位」にも書きましたが、仕事率(W)は1秒当たりの仕事(J:ジュール)ですが、仕事(J:ジュール)は「質量(kg)× 重力加速度(m/s²)× 高さ(m)」で求まります。

それではさっそく、エンジンが1秒間で行う仕事を計算します。

仕事 = m(kg)× g(m/s²)× h(m)= 13.4(kg)× 9.81(m/s²)× 666(m)= 87500(J) = 87.5(kJ)

計算に使用した数字が3桁なので、計算結果も左から4つ目の値を四捨五入しました。

あと桁数が大きいので、単位を(kJ:キロジュール)にしました。

仕事率の単位「W」は、1秒間当たりの仕事なので単位は「J/s」となりますが、上で計算した仕事は1秒間当たりの仕事なので、この値がそのまま仕事率になります。

仕事率 = 87.5(kJ/s)= 87.5(kW)

これでエンジンのトルクと回転数から、エンジンの出力パワー(仕事率:W)が求まりました。

一般的な家電製品の消費電力は、最大で1.5kWなのでやはり大きなパワーです。

ただ、自動車のエンジンは常にこの最大出力パワーを出しているのではなく、加速後に一定の速度で走っているときはかなり少ないパワーで走行しています。

次回は今回の計算結果を使って、馬力(PS)を求めてみようと思います。

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