「dB」の使い方〔4〕(光ファイバーの中を伝わる光の減衰量)
予定を変更して、今回も『「dB」の使い方〔4〕』として、「光ファイバーの中を伝わる光の減衰量」について書かせていただこうと思います。
「電波と光」のことが一冊でまるごとわかる
図書館で『「電波と光」のことが一冊でまるごとわかる』という本を借りて読んでいたら、光ファイバーの中を伝わる光のことが書かれていました。
具体的には、「波長が1.55μmの光を現在の光ファイバーに通すと、20km進んで光量がやっと半分になるくらいです。」とか、「中継器を入れる間隔を100km以上にすることができます。」と書かれています。
この部分を読んだときに、この内容で「dB」の記事を書きたいなと思いました。
ということで、予定を変更して今回も『「dB」の使い方』です。
図書館で借りた本の説明(1)
まずは、「波長が1.55μmの光を現在の光ファイバーに通すと、20km進んで光量がやっと半分になるくらいです。」の記載についてです。
長距離伝送に使われる光ファイバーにおいて、光の損失が少ない波長帯は1.55μmあたりになります。
人間の目に見える光の波長は0.38~0.78μm辺りで、0.38μmは紫色、0.78μmは赤色に見えるので、1.55μmの光は近赤外の領域になります。
ちなみに、CDなどに使用されている光の波長は下記になります。
・CD:0.78μm
・DVD:0.66μm
・BD:0.41μm
こうしてみると、全て可視光ですね。
さて、1.55μmの光は光ファイバーの中では20km先でも光量が半分くらいにしか減衰しないと書かれているので、減衰量を「dB」で表すと「-3dB」になります。
光通信の光パワーの単位には、通常「mW」か「dBm」が使用されます。
「dBm」は、「1mW」を基準にした「dB」の単位で、「dBm」の「m」は「mW」の「m」で、「1mW=0dBm」です。
過去の投稿に書いたように、電力(mW)の10倍の変化は「10dB」、2倍の変化は「3dB」の変化になります。
光ファイバーの入口に「1mW(0dBm)」の光を入れたときに、20km先の光が「0.5mW(-3dBm)」に減衰する様子をグラフ化した絵を下に示します。

このグラフから分かるように、光パワーは4kmで0.6dB減衰するので、1kmでの減衰量は0.15dBであることが分かります。
0.15dBの減衰というと、1mWの光が0.966mWくらいになる程度です。
減衰量をパーセントで示すと、3.4%程度の減衰になります。
図書館で借りた本の説明(2)
次は、「中継器を入れる間隔を100km以上にすることができます。」の記載です。
まずは(1)のグラフを、100km先まで延長したグラフを下に示します。

グラフの左上の着色した部分が(1)のグラフです。
光パワーは20kmで3dB減衰するので、40kmではさらに3dB減衰して合計6dBの減衰になります。
100kmだと15dB減衰するので、入り口で1mWだった光パワーは、出口では0.03mWまで減衰します。
昔の156Mb/sで変調された信号光であれば、-15dBmは余裕で元の電気信号に戻せる光パワーだと思いますが、最近は100Gb/sくらいに変調された帯域の広い信号光なので、ノイズが増えてしまい、受信した信号光を電気信号に戻すためには入り口の光パワーをもう少し上げておく必要があるかもしれません。
ただ、この本には「中継器を入れる」と書かれています。
この本に書かれている「中継器」とは「光増幅器」のことで、減衰した光を電気信号に戻すことなく、信号光をそのまま光増幅し、例えば「-15dBm」まで減衰した光を「0dBm」や、さらに大きな「+5dBm」といった光パワーに高める「中継器」です。
ただ、「光増幅器」でも電気の増幅器と同じように「雑音」も増えるので、どのような間隔で「中継器」を入れて、その「中継器」でどのくらいまで光パワーを上げるのかを決める「光回線設計」が必要です。
それでも「光ファイバー伝送」は「中継器」の間隔を100km以上にできるなど、従来の「同軸伝送」に比べて大きなメリットがあります。
正確でないかもしれませんが、「同軸伝送方式」と「光ファイバー伝送方式」の大まかな比較を下の表に示します。

「光ファイバー伝送方式」の「伝送容量:10000Gb/s」は、通常は「10Tb/s」と書きますが、「同軸伝送方式」と比較しやすいよう、単位を「Gb/s」にそろえました。
ここで10000Gb/sの内訳は、1本の光ファイバーに100種類の波長を入れて、1波長あたりの伝送容量として100Gb/sを想定しました。
このように複数の波長を合波する方法を、波長多重といいます。
また、光ファイバーは同軸と比べてとても細いので、何本かの光ファイバーを束ねることができるので、さらに大容量化が可能になります。
今回は、光伝送路の損失を「dB」で表すことのメリットが伝わればと思い、追加で書かせていただきました。
次回こそ、「抵抗」「コンデンサー」「コイル」の話に戻そうと思います。
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