「dB」の使い方〔3〕(電流の周波数振幅特性)

先々月投稿した「交流電圧を加えたコンデンサーに流れる電流の周波数特性(2)」の最後の方に、「横軸:周波数」、「縦軸:電流」の両対数グラフを描きましたが、今回はこの縦軸を「dB」を使って表現します。

投稿「交流電圧を加えたコンデンサーに流れる電流の周波数特性(2)」の振り返り

まず、先々月の投稿を振り返ります。

回路図は下記になります。

この回路図の「電圧振幅:\(V_{peak}\) 」と「コンデンサーの容量値:\(C\) 」の値は、下記の値にしました。

$$V_{peak}=100\sqrt {2} ≒141(V)$$

$$C=22.5(\mu F) $$

AC100V(周波数:50Hz)の電圧振幅は141Vなので、コンデンサーの容量値は「周波数:\(50Hz\) 」のときのインピーダンス:Zが「\(Z=100\sqrt2≒141(\Omega)\)」になるようにしました。

そうすることで、電流の計算が簡単になります。

この「コンデンサーの容量値:\(22.5\mu F \) 」は、下の計算式で求めました。

$$Z=\displaystyle\frac{1}{\omega C}$$

$$C=\displaystyle\frac{1}{\omega Z}$$

$$C=\displaystyle\frac{1}{2\pi f Z}$$

$$C=\displaystyle\frac{1}{2\pi✕50✕100\sqrt 2} $$

$$C≒22.5✕10^{-6}=22.5(\mu F) $$

このときの交流電圧と交流電流の波形は、下のようになります。

電圧波形から電流波形を求める計算式は、過去の投稿「コンデンサーに加えた交流電圧、電流〔3〕(交流電圧をコンデンサーに印加)」に書いたので省略しますが、電流振幅を求める計算式は下記になります。

$$I_{peak}=\displaystyle\frac{V_{peak}} {Z}=\displaystyle\frac{V_{peak}} {\left(\displaystyle\frac{1} {\omega C} \right)} $$

この式を使って、「周波数:\(f=50Hz\) 」のときの「電流振幅:\(I_{peak}\) 」を計算すると下記になります。

$$I_{peak}=\displaystyle\frac{V_{peak}} {\left(\displaystyle\frac{1} {\omega C} \right)} $$

$$I_{peak}=\displaystyle\frac{V_{peak}} {\left(\displaystyle\frac{1} {2\pi f C} \right)} $$

$$I_{peak}=\displaystyle\frac{141} {\left(\displaystyle\frac{1} {2\pi 50✕ 22.5✕10^{-6}} \right)} $$

$$I_{peak}≒\displaystyle\frac{141} {\left(141\right)}=1(A) $$

同様に、「周波数:\(f=5Hz~500Hz\) 」のときの「電流振幅:\(I_{peak}\) 」を計算すると、下の表のようになります。

この表の周波数を横軸、電流振幅を縦軸でグラフを描くと下記になります。

上のグラフを、両対数グラフにすると下記になります。

先々月の投稿で書いたのは、この辺りまででした。

両対数グラフの「縦軸:電流」を「dB値」で表示

さて、それでは上のグラフの縦軸を「dB値」に変更します。

縦軸の電流振幅は0.1Aから10Aまで変化するので、1Aを基準の0dBとします。

そうすると、上のグラフは下のように表せます。

過去の投稿に書いたように、電力の場合は10倍が10dBですが、電圧や電流の場合は10倍が20dBになります。

グラフを見ると、周波数が一桁変わると電流増減比が20dB変化していることが分かります。

これを一般に、「20dB/dec(デシベル_パー_ディケイド)」と表現します。

「dec」は「decade」の略で、「10年間、10年」と和訳されますが、ここでは周波数が10倍変化することを意味します。

このように、周波数が10倍変化する毎に電流が20dB変化することを、電流が変化する傾斜は「20dB/dec」などと表現します。

また、同じ傾斜を「6dB/oct(デシベル_パー_オクターブ)」とも表現します。

「oct」は「octave」の略で、音楽の「オクターブ、8度音程」などと和訳されますが、ここでは周波数が2倍変化する意味で使用します。

音が1オクターブ上がると音の周波数は2倍になりますが、その意味になります。

「6dB/oct」は厳密には「6.02…dB/oct」ですが、一般的に「6dB/oct」と表現します。

こちらも、電流が変化する傾斜は「6dB/oct」などと表現します。

この傾斜を一次傾斜と表現することもありますが、それについては来年の夏くらいの投稿で書くことができればなと思います。

「dB」に関する投稿は今回までとして、次回からはこの「dB」のグラフを活用しながら、「抵抗」「コンデンサー」「コイル」と電圧や電流に関する投稿を再開しようと思います。

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