「dB」の使い方〔2〕(オーディオ機器のVUメーターのdB)
今回は、オーディオ機器のアンプやカセットデッキなどで使用されていた「VUメーター」のdBについて書きます。
「VUメーター」とは?
現在のオーディオ機器にはあまり使用されていないと思いますが、以前のステレオのアンプやカセットデッキには、下の画像のようなアナログメーターがよく使われていました。
いろんな種類がありますが、目盛りは下記が一般的と思います。
・左半分は黒色で「-20~0dB」と表示
・右半分は赤色で「0~+3dB」と表示
上の画像のように、+3dBを超える値まで表示されているものもあります。
このVUメーターの使い方ですが、自分の場合はレコードの音楽を、カセットテープに録音するときに使っていました。
レコードプレーヤから出力される音楽の信号を、電気コードでカセットデッキに入力するのですが、そのカセットテープに録音する音の大きさを、このメーターを見ながら調整しました。
音声レベルが低すぎると雑音が増えますし、高すぎると音声が歪んでしまいます。
取扱説明書に書かれていたように思いますが、録音前にカセットデッキの「VUメーター」を見ながら曲を流し、音楽の信号が一番大きいときに「VUメーター」の針が「0dB」になるように、レベル調整用のダイヤルを回して録音レベルを調整します。
曲によっては、メーターの針が一瞬だけ大きく振れる場合がありますが、そのときでも「+3dB」を超えないように調整するように書かれていたと思います。
ちなみに「VUメーター」は「volume unit meter」で、「音量指示計器」と訳されます。
「VUメーター」の「0dB」とは?
それでは、「VUメーター」の「0dB」はどう定義されているかについて書きます。
Wikipediaには、「VUメーター」の「開発当時の定義」として、「インピーダンス600Ωの負荷回路へ1kHzの正弦波を加えて1mWの電力を消費したときの出力電圧を0dBmとし、+4dBmを0VU(0dB)とする」と書かれています。
ちょっと複雑なので、具体的に計算した数値を下の表にまとめてみました。
この表は、「VUメーター」の「開発当時の定義」に基づいて作成しましたが、製品によっては異なる定義もあるので、正確さが求められる場合には、個別に定義を確認する必要があります。
この表を、左の列の「VUメーター」の「dB値」をスタート地点にして、一つずつ右となりの列との関係を説明していきます。
「dB値@VU」⇔「dBm値」
まず、「dB値@VU」と「dBm値」の関係です。
前回の投稿でも少し書いたように、「0dBm」は「1mW」を基準としていますが、「dBm値」から「4dB」引くと「VUメーター」の「dB値」になります。
逆に「VUメーター」の「dB値」に「4dB」足すと「dBm値」になるので、「VUメーター」の「0dB」は「+4dBm」になります。
「dBm値」⇔「電力」
次に「dBm値」と「電力」の関係ですが、ここでの「電力」は単位が「mW(ミリワット)」の値です。
ちなみに「dBm」の「m」は「mW」の「m」で、「dBm」は通常「デービーエム」と言いますが、正式には「デシベルミリワット」です。
「dBm値」を「y」、「電力(mW)」を「x」とすると、下の関係式で表せます。
$$y(dBm)=10\log [x(mW)] $$
例えば「\(x=0.1(mW)\) 」のときの「\(y(dBm)\) 」を計算すると下記になります。
$$y=10\log [x(mW)] =10\log [0.1] =10✕ (-1) =-10(dBm) $$
逆に「y」から「x」を計算する場合は下の式になります。
$$x(mW)=10^{y(dBm)/10}$$
「\(y=-10(dBm)\) 」の場合の「\(x(mW)\) 」を計算すると下記になります。
$$x=10^{y(dBm)/10} =10^ {-10/10} =10^ {-1} =0.1(mW)$$
これらの関係式を使うと、「mW値」を「dBm値」にし、「dBm値」で信号の増減を計算し、その計算結果を必要に応じて「mW値」に戻すといったことができます。
「電力」⇔「実効電圧」
次は「電力(mW値)」と「実効電圧(Vrms値)」の関係です。
簡潔に表現するため、表には「実効電圧」と書きましたが、一般的には「実効値電圧」とか「電圧の実効値」という表現になると思います。
「電力」と「電圧」の関係式を求めるためには、「抵抗」が必要です。
「VUメーター」の「開発当時の定義」に、「インピーダンス600Ωの負荷回路」というくだりがありますが、回路図にすると下記になります。
ここでの「インピーダンス」は、「600Ωの抵抗」になります。
「600Ωの抵抗:\(R\) 」で消費される「電力:\(P\) 」と「電圧:\(V\) 」の関係は、下の式で表せます。
$$P=\displaystyle\frac{V^2} {R}$$
少し補足しておくと、この式の元になるのは、「電力:\(P\) 」と「電圧:\(V\) 」と「電流:\(I\) 」で表される下の関係式です。
$$P=VI$$
「電圧:\(V\) 」と「電流:\(I\) 」を掛け合わせると、「電力:\(P\) 」が計算できるという関係式です。
これに「オームの法則」の「\(V=RI\) 」を使うと、上の式は下記になります。
$$P=VI=RI✕I=RI^2$$
同じく「オームの法則」の「\(I=\displaystyle\frac{V}{R} \) 」を使うと、下記になります。
$$P=VI=V\displaystyle\frac{V}{R} =\displaystyle\frac{V^2} {R}$$
「\(P=\displaystyle\frac{V^2} {R}\) 」を「\(V=…\) 」の式にすると「\(V=\sqrt {PR} \) 」になります。
この式を使って、「電力:1mW」のときの「電圧:V」を計算すると、下記になります。
$$V=\sqrt {PR}=\sqrt {0.001✕600} =\sqrt {0.6} ≒0.77(V_{rms}) $$
この計算で求めた「V:電圧」は「実効値電圧」で、単位は「\(V_{rms}\) 」ですが、単に「\(V\) 」と書くことも多いので注意が必要です。
「実効電圧」⇔「電圧振幅」
最後に、「実効電圧(実効値電圧)」と「電圧振幅」の関係です。
電圧の「実効値」と「振幅」の関係は、「直流と交流の違い」の投稿で書きましたが、簡単な例を使って説明しておきます。
下の画像は、家庭用AC100V電源の電圧波形(50Hz)です。
例えば100Ωの抵抗に「直流電圧:100V」を加えると、抵抗には「直流電流:1A」が流れて、抵抗での「消費電力」は「100W」になります。
同じ100Ωの抵抗に「交流電圧」を加えたときに、同じ「消費電力:100W」になる「交流電圧」が「実効電圧(実効値電圧)」の「100Vrms」になります。
「交流電圧」の波形が「正弦波(sin波)」のときの「100Vrms」は、上の波形のように「電圧振幅:Vpeak=100√2≒141V」になります。
「実効電圧(実効値電圧)」と「電圧振幅」の関係式の求め方は、「直流と交流の違い」の投稿を見ていただくとして、波形が「正弦波(sin波)」の場合、「実効電圧(実効値電圧)」を\(\sqrt2\)倍すると「電圧振幅」になります。
下の波形は、「VUメーター:0dB」のときの電圧波形になります。
上の表から「VUメーター」の「0dB」は、「+4dBm」で「2.51mW」なので、「実効電圧(実効値電圧)」は「1.23Vrms」となり、「電圧振幅」は「1.23Vrms」を\(\sqrt2\)倍した「1.74V」になります。
上の画像の「+Vpeak」は「+1.74V」、「-Vpeak」は「-1.74V」で、波形の「peak値(ピークち)」は「1.74V」、「peak to peak値(ピークトゥピークち)」は「3.48Vp-p」と表現します。
この表現方法は、会社や分野によって少し異なるかもしれませんが、比較的一般的な言い方と思います。
次回は、「交流電圧を加えたコンデンサーに流れる電流の周波数特性」の投稿の両対数グラフを、「dB」を使って表現してみようと思います。
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