「両対数グラフ」の縦軸を「dB」で表示(2)

前回の投稿では、両対数グラフの縦軸「\(100、10、1、0.1、0.01\) 」を、対数関数「\(\log _{10} \) 」を使うことで、「\(2、1、0、-1、-2\) 」と表せると書きましたが、今回はこれを「dB」という単位で表します。

「dB」という単位の説明

下のグラフは、前回の投稿の最後に載せたグラフです。

「dB」という単位の説明と書きましたが、実は既にこの縦軸はほぼ「dB」になっています。

「dB」という単位は、「d(デシ)」という補助単位(正式にはSI接頭語というようですが…)と、「B(ベル)」という単位を組み合わせたものです。

「B(ベル)」という単位ですが、電話局から電話機までの電線が長くなると、音声信号が電線で減衰して小さくなるので、電線でどのくらい減衰するかを減衰比で数値化したものです。

この単位は、具体的には電線に入力する電気信号の「電力」と、電線で減衰したあとで電話機に届く「電力」の比率です。

この単位「B(ベル)」は、実用的な電話機の発明者として知られている「グラハム・ベル」さんの名前に由来しています。

ただ、ここでは前回の投稿と同様、「電力」などの物理量ではなく、まずは一般的な数字で話を進めます。

このとき、上のグラフの縦軸の単位がそのまま「B(ベル)」になります。

グラフに単位「B(ベル)」を追記すると下記になります。

この縦軸では、「+1B(ベル)」が「10倍」を表しますが、このままだと少し使いづらいので、「1/10」を表す補助単位である「d(デシ)」を頭に付けた「dB(デシベル)」が一般に使用されます。

なので、10倍は「+1B(ベル)= +10dB(デシベル)」になり、グラフにすると下記になります。

「電力」と「電圧・電流」とで異なる「dB」の説明

さて、ここからは一般的な数字の話から、物理量の話に戻します。

先ほど、「B(ベル)」という単位は、電気信号の「電力」の減衰比を表すためにできたと書きました。

それに対して、「交流電圧を加えたコンデンサーに流れる電流の周波数特性(2)」の最後のグラフの縦軸は、電力ではなくて電流だったので少し調整が必要です。

「電力:\(P\) 」と「電流:\(I\) 」の関係式は、「抵抗:\(R\) 」を使うと下記になります。

$$P=V✕I=RI✕I=RI^2$$

電話線の入口と出口の消費電力を、「\(_{in}\) 」「\(_{out}\) 」を右下につけて表すと下記になります。

〔入口での消費電力〕

$$P_{in}=RI_{in}^2$$

〔出口での消費電力〕

$$P_{out}=RI_{out}^2$$

〔入口での消費電力〕を基準に〔出口での消費電力〕の比率を計算し、その「dB(デシベル)」表示である「\(y\) 」を計算すると下記になります。

$$y=10\log\left(\displaystyle\frac{P_{out}} {P_{in}} \right) $$

$$y=10\log\left(\displaystyle\frac{RI_{out}^2} {RI_{in}^2} \right) $$

$$y=10\log\left(\displaystyle\frac{I_{out}^2} {I_{in}^2} \right) $$

$$y=10\log\left(\displaystyle\frac{I_{out}} {I_{in}} \right) ^2 $$

$$y=10✕2\log\left(\displaystyle\frac{I_{out}} {I_{in}} \right) $$

$$y=20\log\left (\displaystyle\frac{I_{out}} {I_{in}} \right) $$

上の式から分かるように、電力が10倍のときは「+10dB」ですが、電流振幅や電圧振幅が10倍のときは「+20dB」になります。

これを、電力と電圧,電流の両方を一つの表にまとめると下記になります。

「電圧」や「電流」について、「dB」のグラフを作成すると下記になります。

ここで先ほどの「\(P=RI^2\) 」で、「電流:\(I\) 」が10倍になったときの「電力:\(P\) 」を考えます。

「\(P=RI^2\) 」の「電流:\(I\) 」が10倍になったときの「電力:\(P\) 」は下記になります。

$$R(10I)^2=100RI^2=100P$$

計算式を少し端折りましたが、電流が10倍になると電力は100倍になるので、両方とも「+20dB」になります。

ただし、「dB」で足し算や引き算を行う場合は、電流なら電流どうし、電圧なら電圧どうし、電力なら電力どうしで行います。

通常「dB」は、同じ物理量が増減する比率計算に使用するので、このようになります。

次回は「dB」への理解を深めるため、「dB」での足し算や引き算の例について書こうと思います。

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