「dB」の使い方〔1〕(電話局~電話機間の信号の増減比)

前回までは、「dB」という単位について書いたので、今度は「dB」の使い方について書いていきます。

電話局~電話機間の信号の増減比

前回の投稿では、電線で音声信号が減衰するのを表す単位として「dB」が誕生したと書きました。

今回も同じように、電線で音声信号が減衰する場合を想定しますが、途中に信号を増幅する増幅器を入れました。

具体的には下の図のような構成です。

音声は双方向に伝わりますが、ここでは「電話局」から「電話機」に向けて、一方向に音声信号が電力として伝わるイメージで考えます。

左側の「電話局」から電線に入った信号電力は、電線1kmあたり20%減衰すると仮定します。

「電話局」から10km先に「増幅器」があり、そこで信号を20倍に増幅し、さらに10km先の「電話機」まで信号を伝えるとします。

この「0~20km」までの距離を横軸にして、信号電力の増減比を縦軸にしたグラフを作成すると下記になります。

このグラフは、「電話局」から電線に入力した信号電力を基準の「1」として、伝送距離で信号電力がどのように増減するかを表しています。

このグラフを、縦軸だけ対数にした「片対数グラフ」にすると下記になります。

1kmごとに信号電力は20%減衰して0.8倍になるので、縦軸を対数にするとグラフのプロットは直線になります。

この縦軸を「dB」で表すと、下記になります。

信号は電力としているので、縦軸の計算式は「\(10\log\left(\displaystyle\frac{P_{out}} {P_{in}} \right) \) 」です。

下の表に、-20~+20dBの「dB値」と「電力」、「電圧,電流」の比率の関係をまとめました。

この表を見ながら、上の「電話局」から「電話機」までの信号電力の増減を、大まかにたどってみます。

最初に「電話局」から「増幅器」までですが、信号電力の減衰比は「1km」で0.8倍になるので、「dB値」は「0.79倍」の「-1dB」とします。

そうすると電線での減衰は「-1dB/km」になるので、「10km」だと「-1dB/km✕10km=-10dB」となり、「増幅器」に届くときには「1/10」になります。

次に、「増幅器」で「20倍」に増幅するので、「dB値」は上の表から「20倍」に近い「+13dB」とします。

そのあと、再び「10km」で「-10dB」減衰するので「1/10」になります。

普通に比率で計算すると、増減比は「(1/10)✕(20)✕(1/10)=1/5」になります。

これを「dB値」で計算すると、「-10dB+13dB-10dB=-7dB」となり、これは上の表から「0.2」になります。

この「0.2」は、先に計算した「1/5」とほぼ同じ値です。

ほぼ同じ値と書いたのは、「-7dB」の減衰比は桁数を増やすと「0.1995‥」になり、「1/5」と同じ値ではないからです。

それでも、信号の増減比などを大まかに把握したいときに「dB」を使うと、「当たらずとも遠からず」という概算値を、足し算と引き算で計算することができます。

これは、段階的に増減するような増幅回路や、回線の設計などを行うときには便利な方法です。

また、周波数によって振幅が変化する様子も表現しやすいので、今後はちょくちょく使っていくつもりです。

表を使わずに「dB値」に対応した増減比を求める方法

上の表がいつも手元にあると良いのですが、手元に無くても下の3つの「dB値」を覚えておくと、その他の「dB値」は大まかに計算できます。

【3つの「dB値」と「比率」(電力)】

・ +3dB:約2倍 ⇒ -3dB:約1/2

・ +5dB:約3倍 ⇒ -5dB:約1/3

・+10dB:10倍 ⇒ -10dB:1/10

上の3つ以外の「dB値」の求め方の一例を下に示します。

\(〔+1dB〕⇒10dB-3dB-3dB-3dB\)

\(≒10✕\displaystyle\frac{1} {2}✕\displaystyle\frac{1} {2}✕\displaystyle\frac{1} {2}=\displaystyle\frac{10} {8}=1.25\)倍

\(〔+2dB〕⇒10dB-5dB-3dB\)

\(≒10✕\displaystyle\frac{1} {3}✕\displaystyle\frac{1} {2}=\displaystyle\frac{10} {6}≒1.6\)倍

\(〔+4dB〕⇒10dB-3dB-3dB\)

\(≒10✕\displaystyle\frac{1} {2}✕\displaystyle\frac{1} {2}=\displaystyle\frac{10} {4}≒2.5\)倍

\(〔+6dB〕⇒3dB+3dB\)

\(≒2✕2=4\)倍

\(〔+7dB〕⇒10dB-3dB\)

\(≒10✕\displaystyle\frac{1} {2}=5\)倍

\(〔+8dB〕⇒5dB+3dB\)

\(≒3✕2=6\)倍

\(〔+9dB〕⇒3dB+3dB+3dB\)

\(≒2✕2✕2=8\)倍

これらの「dB値」は、上の表に書かれている「比率」に近い値になります。

少し余談です

余談になりますが、自分が入社時に配属された光送受信回路の開発部門では、光ファイバー内の光パワーを表すのに、通常は「mW」ではなく「dBm」を使用していました。

「dBm」という単位は、「1mW」を基準と考えて「0dBm」とするので、10倍の「10mW」は「+10dBm」、1/1000の「0.001mW」は「-30dBm」になります。

例えば、光伝送路内の光の増減を計算するときに、例えば「1mW」が「1/40」に減衰し、それを「50倍」に光増幅し、その後「1/20」に減衰して「0.0625mW」になったとします。

これを「dB値」で計算すると、「0dBm(1mW)」が「-16dB(約1/40)」減衰⇒「+17dB(約50倍)」増幅⇒「-13dB(約1/20)」減衰となり、「0dBm-16dB+17dB-13dB=-12dBm(0.0631mW)」と概算値を計算しやすく、慣れてくると全体のレベルの増減の様子が把握しやすくなります。

「0.0625mW」と「-12dBm(0.0631mW)」には少し差がありますが、大まかにとらえるときには、あまり問題になりません。

「全体を大まかに考える」場合と、「厳密に計算する」場合の使い分けが大切と思います。

次回は、オーディオ機器に使用されている「VUメーター」の「dB表示」について書こうと思います。

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