交流電圧を加えたコイルと抵抗に流れる電流〔2〕(周波数-電流振幅/位相グラフ)

今回は、前回の〔1〕の最後の表の「周波数」「電流振幅」「電流位相」の値を使って、横軸「周波数」のグラフを描き、「周波数」で「電流振幅」と「電流位相」がどのように変化するかを書きます。

前回の投稿〔1〕の回路図と「周波数」「電流振幅」「電流位相」の表

今回も、前回の投稿〔1〕の内容を簡単に書いておきます。

まず、回路図は下記です。

電圧源の振幅や、コイルのインダクタンスなどの値は下記になります。

・電圧振幅(Vpeak):141 V(実効値:100Vrms

・電圧の角周波数(ω):100π rad/s(周波数:50Hz)

 ⇨ ω=2πf =2π (rad)✕50 (Hz) =100π (rad/s)

・抵抗値(R):141 Ω

・インダクタンス値(L):0.45 H(ヘンリー)

「インダクタンス値:0.45H」は、「角周波数:100π rad/s(周波数:50 Hz)」で「抵抗値(インピーダンス値:Z)」が141Ωになる値です。

次に下の表ですが、これは前回の〔1〕の最後に貼り付けた表で、「角周波数:10π~1000π rad/s(周波数:5~500 Hz)」のときの「電流振幅」と「電流位相」を書いています。

それでは、さっそくこの表をグラフ化します。

電流振幅と電流位相のグラフ

まず、横軸「周波数」で、表の左3列の「電流振幅」を縦軸にしたグラフを下に示します。

この表を見ると、変化の中心である「周波数:50Hz」付近が左下に小さく表示されていて、よく見えません。

「周波数:50Hz」付近の変化を見やすくするため、このグラフの縦軸と横軸を「ログスケール(対数目盛)」にして描くと下記になります。

このグラフから、「抵抗(青色の線)」と「コイル(赤色の線)」の電流振幅が、「周波数:50Hz」で同じ値(1A)になっていることが分かります。

さらにこのグラフの縦軸を、「電流振幅:1A」を「0dB」とした「dB」で表すと下記になります。

このグラフの縦軸は、電流振幅「1A」を基準の「0dB」にしているので、電流振幅を「\(I(A)\) 」とすると縦軸は「\(20✕\log \displaystyle\frac{I(A)}{1(A)} \) 」で計算できます。

ちなみに、式の中の「\((A)\) 」は電流の単位の「アンペア」です。

このとき、表の右3列の「電流位相」のグラフは下記になります。

一見すると、コンデンサーの位相グラフと同じように見えますが、上の青線が「位相:0deg」、下の赤線が「位相:-90deg」で、紫色の線は高い周波数で「位相:0deg」に近づきます。

比較用に、コンデンサーの位相グラフを下に置くので、見比べてください。

コンデンサーのときと同様、左右の端が途切れているように見えるので、次の項では周波数の範囲を、「5~500Hz」から「0.1~10000Hz(=10kHz)」に広げて描きます。

電流振幅と電流位相のグラフの周波数軸を拡大

周波数を「0.1~10000Hz(=10kHz)」に拡大した表を下に示します。

周波数5桁分の表ですが、横軸を対数、縦軸を「dB」で表すと、下のグラフになります。

下の「周波数-位相」のグラフと合わせてご確認ください。

それでは最初に、上の「周波数-電流振幅」のグラフについて書きます。

左の方の低い周波数では、コイルに流れる電流が大きいので、「電流振幅@R+L」の電流(紫色の線)は、ほぼコイルに流れる電流(赤色の線)に重なります。

逆に右の方の高い周波数では、コイルの電気抵抗が大きくなって電流振幅が小さくなるので、「電流振幅@R+L」の電流(紫色の線)は、ほぼ抵抗に流れる電流(青色の線)と重なります。

赤い線と青い線が交差している「50Hz」では、二つの電流が両方「0dB(1A)」になるので、「電流振幅@R+L」は「\(\sqrt{(1A) ^ {2} +(1A) ^ {2}} =\sqrt {2}A\) 」で「約1.41A」になり、「\(20\log (1.41A/1A) \) 」を計算すると「約3dB」になります。

次に、電流位相のグラフについて書きますが、見えなくなってきたので電流位相のグラフをもう一度貼りつけます。

こちらも左の方の低い周波数では、コイルに流れる電流が大きいので、「電流位相@R+L」(紫色の線)は、ほぼ「電流位相@L」(赤色の線)の「位相:-90 deg」に重なります。

逆に右の方の高い周波数では、コイルに流れる電流が小さくなるので、「電流位相@R+L」(紫色の線)は、ほぼ「電流位相@R」(青色の線)の「位相:0 deg」に重なります。

コンデンサーと抵抗に流れる電流が等しくなる「周波数:50Hz」では、「電流位相@R+L」は中間の「位相:45 deg」になります。

その他の回路の組合せ

これまで、「電圧源」に並列接続した「R」「C」、または「R」「L」に流れる電流の「波形」や「周波数-振幅/位相特性」について書いてきました。

「R」「C」の場合を例にとると、使用した回路は下記でした。

この回路だと、「R」と「C」のそれぞれに電圧源の電圧「V(t)」が加わるので、「R」に流れる電流と「C」に流れる電流は、これまで書いてきた方法で計算できます。

電圧源「V(t)」に流れる電流は、それらを足し合わせることで計算できました。

しかし、例えば下の回路だと、「R」両端の電圧と「C」両端の電圧が分からないので、電圧源「V(t)」に流れる電流は、簡単には計算できません。

ここで、電圧源「V(t)」を電流源「I(t)」に変更すると下の回路になり、「R」と「C」に流れる電流は「I(t)」になるので、「R」と「C」の両端の電圧が計算できます。

そうすると、電流源「I(t)」の両端の電圧も計算することができ、電圧と電流の関係が分かるはずです。

一つ上の電圧源の回路に流れる電流の計算方法を導くことができたら、上の二つ回路の電圧と電流の関係を比較する記事を書きたいと思います。

ちなみに、最初の回路の電圧源「V(t)」を電流源「I(t)」に置き換えた下の回路も、「R」と「C」に流れる電流が分からないので、簡単に計算できません。

今後はこのように、これまで書いてきた方法では計算できない「R」「C」「L」で構成される回路の電圧や電流を計算する方法について書いていこうと思います。

ただ、これまで家庭用電源「AC100V」に「R」「C」「L」を接続した記事を書いてきたので、次回は「AC100V」の消費電力に関係する下の用語について書いておこうと思います。

・実効電力(W_ワット)

・無効電力(var_バール)

・皮相電力(VA_ボルトアンペア)

・力率(比率なので単位無し、あるいは%)

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