電流や電力などの「極座標」を「複素平面」で表示〔1〕(抵抗とコイル)

これまで、「電流」や「電力」の大きさと位相のグラフには「極座標」を使いましたが、今回は「自然数から複素数、複素平面へ〔2〕」の投稿で書いた「複素平面」を使ってみます。

使用する回路

今年3月に投稿した「AC100Vの皮相/有効/無効電力〔3〕(電流位相:-30deg)」では、下の回路を使いました。

「抵抗」などの値は下記でした。

・電圧振幅\((V_{peak}):141V\) ( ⇒実効値\(:100V_{rms}\))

・抵抗値\((R):100Ω\)

・インダクタンス値\((L):551mH\) (ミリヘンリー)

・周波数\((f):50Hz\) (\(\omega=2\pi f\) )

今回も、この回路を使います。

次の項からは、3月の投稿で描いた「極座標」を左側に置き、それに対応する「複素平面」を右側に置いて書いていきます。

交流電圧源の大きさ(実効値)と位相

最初に、「交流電圧源」の大きさ(実効値)と位相を、「極座標」と「複素平面」で描きました。

位相は、交流電圧を基準にしたので「\(∠0deg\) 」となり、電圧を表す矢印は、左側の「極座標」では、横軸上で右向きになります。

右側の「複素平面」では、この「\(∠0deg\) 」に相当する横軸が「実軸(実数軸)」になり、矢印はやはり横軸上で右向きになります。

ちなみに、「\(∠90deg\) 」に相当する「複素平面」の縦軸は「虚軸(虚数軸)」になり、上向きが「正(プラス)」、下向きが「負(マイナス)」になります。

このように、「極座標」と「複素平面」の「交流電圧源」の青い矢印は、同じ向き、同じ長さになります。

交流電流の大きさ(実効値)と位相

次は、「交流電圧源」に流れる「交流電流」ですが、これは「抵抗」と「コイル」に流れる電流を足し合わせた電流になります。

その「交流電流」の大きさ(実効値)と位相を、「極座標」と「複素平面」に描くと下記になります。

「抵抗」に流れる電流を、「青い矢印」で描きました。

「コイル」に流れる電流は、「赤い矢印」で描きました。

「交流電圧源」に流れる「交流電流」は、この「青い矢印」と「赤い矢印」を足し合わせた「紫の矢印」にしました。

電流の値や位相の計算方法は、「AC100Vの皮相/有効/無効電力〔3〕(電流位相:-30deg)」の投稿に書いているので省略しますが、矢印の向きと長さは、「極座標」と「複素平面」で同じです。

「コイル」に流れる電流の位相は「\(∠-90deg\) 」なので、「赤い矢印」は下向きになっています。

この「赤い矢印」を、「極座標」では「\(0.577A_{rms}∠-90deg\) 」、「複素平面」では「\(-j0.577A_{rms}\) 」と表します。

「自然数から複素数、複素平面へ〔2〕」の投稿では、「複素数」の記載例を「\(z=3+4i\) 」としましたが、ここでは「\(i=1.0-j0.577\) 」としています。

今回の投稿では、「\(i\) 」は電流で、「\(j\) 」が「虚数単位」です。

「虚数単位」が「\(i\) 」ではなく「\(j\) 」になっているのは、電気の分野では電流の記号に「\(i\) 」を使うためで、電流の「\(i\) 」と区別する目的で「\(j\) 」を使います。

また、「虚数単位:\(j\) 」は、右端ではなく左端にあります。

その理由は、今後の「複素数」の計算には、「抵抗」や「電圧」などを表す記号の「\(R\) 」や「\(V\) 」を含む文字式を使いますが、文字式の項の中では、通常左側に「実数」、右側に「\(R\) 」や「\(V\) 」を置きます。

その場合、「\(j\) 」を項の右端に置くと、その項が「実数」の項か、「虚数」の項かが分かりづらくなるので、「\(j\) 」を右側ではなく左側に置くのだと思います。

電力の値と位相

最後に、「交流電圧」と「交流電流」を掛け算して求める「電力」です。

「電力」には、「皮相電力」「無効電力」「有効電力」の3つがあることは「AC100Vの皮相/有効/無効電力〔1~4〕」の投稿に書きましたが、それぞれを「極座標」と「複素平面」に描くと下記になります。

「有効電力」は、「青い矢印」で描きました。

「無効電力」は、「赤い矢印」で描きました。

「皮相電力」は、「紫の矢印」で描きました。

「極座標」上で、「交流電圧」に「交流電流」を掛けて、「皮相電力」を求める計算式は下記になります。

$$V \times I = (100V_{rms}\angle 0deg) \times (1.15A_{rms}\angle -30deg) $$

$$ = (100V_{rms} \times 1.15A_{rms}) \angle (0deg-30deg) $$

$$ = 115VA\angle -30deg $$

「極座標」上での掛け算のルールは、矢印の長さはそのまま掛け合わせ、「\(∠\) 」で表す位相(角度)は足し合わせます。

「複素平面」上で、「交流電圧」に「交流電流」を掛けて、「皮相電力」を求める計算式は下記になります。

$$V \times I=100V_{rms} \times (1.0A_{rms}-j0.577A_{rms})$$

$$=(100V_{rms} \times 1.0A_{rms})-j(100V_{rms} \times 0.577A_{rms})$$

$$=100W-j57.7var$$

「極座標」と「複素平面」のどちらを使った方がよいかは一概に言えませんが、「複素平面」上の「複素数」計算には、四則計算のルールが使えるので、汎用性はあるように思います。

次回は、「抵抗」と「コンデンサー」の場合について書こうと思います。

よろしければ以下のバナーをクリックしていただけると励みになります!

にほんブログ村 科学ブログへ
にほんブログ村 科学ランキング
科学ランキング