AC100Vの皮相/有効/無効電力〔1〕(電流位相@R+C=45deg)

今回は「家庭用電源:AC100V」の3種類の電力について、先日投稿した「交流電圧を加えたコンデンサーと抵抗に流れる電流」の回路を使って説明します。

使用する回路の説明

「交流電圧を加えたコンデンサーと抵抗に流れる電流」で使用した回路図は下記です。

左側に電圧源があり、右のコンデンサーと抵抗に接続されています。

電圧や抵抗値などの値は、前回の投稿から一部変更して下記とします。

・電圧振幅(Vpeak):141V

  ⇒電圧実効値:100Vrms

・抵抗値(R):100Ω

・容量値(C):31.8uF

・周波数(f):50Hz

  ⇒角周波数(ω):2πf =2π50 =100π rad/s

家庭用電源:AC100Vの周波数は、東日本の周波数:50Hzにしました。

電流の実効値を「1Arms」にしたかったので、抵抗値は100Ωにしました。

容量値は、周波数:50Hzでインピーダンスが100Ωになるように、31.8uFにしました。

ちなみに、コンデンサーの「インピーダンス:ZC」は、下のように計算できます。

$$Z_C=\displaystyle\frac{1}{\omega C} =\displaystyle\frac{1}{2\pi f C}$$

$$Z_C=\displaystyle\frac{1}{2\pi✕50✕31.8✕10^{-6}}$$

$$Z_C=\displaystyle\frac{1}{0.01}=100(\Omega) $$

それでは次の項で、この回路の電圧と電流の極座標と、電力の極座標を説明します。

電圧、電流、電力の極座標

まず、電圧の極座標は下記になります。

グラフに「100Vrms ∠0deg」と書きましたが、「100Vrms」が矢印の長さ(大きさ)を表し、「∠0deg」は位相を表します。

矢印の長さを「100Vrms」としたのは、前の項で電圧の実効値を100Vrmsにしたからです。

位相を「∠0deg」としたのは、電圧の位相を基準の「∠0deg」にすると、電流の位相の進みや遅れが分かりやすくなるからです。

試験問題などでは、電圧の位相が「∠0deg」以外の場合もありますが、通常は電圧の位相を「∠0deg」と考えて良いと思います。

次に電流の極座標ですが、下のグラフに示すように抵抗に流れる電流を青い矢印、コンデンサーに流れる電流を赤い矢印で示したとき、二つの電流を足し合わせた電流は紫色の矢印になります。

この紫色の矢印だけを、下のグラフに示します。

この紫色の矢印の長さと位相は、「交流電圧を加えたコンデンサーと抵抗に流れる電流」の投稿で書いたように、長さは「\(\sqrt {Ir^2+Ic^2} =\sqrt {1^2+1^2} =\sqrt {2} =1.41 \) 」から1.41Armsになります。

位相も「\(\arctan \left(\displaystyle\frac{Ic}{Ir} \right) =\arctan \left(\displaystyle\frac{1}{1} \right) =45\) 」から45degとなるので、下のグラフの吹き出しに書いたように「1.41Arms ∠45deg」になります。

電圧と電流の「実効値」と「位相」が分かったので、次に電力を求めます。

電力は、基本的には電圧と電流の掛け算で計算できますが、今回のように「極座標」を掛け算するときは、「矢印の長さ」はそのまま掛け算で求まり、「位相」は足し算で求まります。

具体的には、下のような計算になります。

$$\dot{V} \times \dot{I} = (100V_{rms}\angle 0deg) \times (1.41A_{rms}\angle 45deg) $$

$$\dot{V} \times \dot{I} = (100V_{rms} \times 1.41A_{rms}) \angle (0deg+45deg) $$

$$\dot{V} \times \dot{I} = 141VA\angle 45deg $$

「V」と「I」の上にドットを付けていますが、これはこの記号が極座標上の値で、大きさ(矢印の長さ)と方向(位相)をもっていることを表します。

上の計算で求めた電力は「皮相電力」とよばれ、極座標では下記になります。

この「皮相電力」において、「電圧」と同じ位相:0degの方向の大きさを「有効電力」とよび、「電圧」の位相と直交している位相:90degの方向の大きさを「無効電力」とよびます。

下の極座標のグラフに、その様子を示します。

一般に電気料金として課金の対象になる「消費電力」は、この「有効電力」になります。

もう一つ、「力率」についても書いておきます。

「皮相電力」の大きさを「1」としたときの「有効電力」の大きさが「力率」になります。

今回の回路で具体的に計算すると、「力率 = 有効電力/皮相電力 = 100/141 = 0.707」になります。

「有効電力」の位相を基準(0deg)と考えて、「皮相電力」の位相を「θ」とすると、「力率 = 有効電力/皮相電力 = cos θ」になるので、「cos 45deg = 0.707」からも力率を計算できます。

電力会社との契約内容によっては、この「力率」も電気料金に関係しますが、それはまた別の機会に書きたいと思います。

今回の回路で、電力に関する数値をまとめて書くと、下記になります。

・皮相電力:141VA(ボルトアンペア)

・有効電力:100W(ワット)

・無効電力:100var(バール)

・力率  :0.707(あるいは、70.7%)

今回は、「有効電力」と「無効電力」が同じ値になる回路について書いたので、次回は異なる値になる回路について書いてみようと思います。

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