AC100Vの皮相/有効/無効電力〔2〕(電流位相:30deg)
前回書いた電力の話は「電流位相\(:45deg\) 」の場合で、極座標の横軸と縦軸が同じ値だったので、今回は別の値になるよう「電流位相\(:30deg\) 」の場合について書きます。
電流位相:30degの回路
最初に「電流位相\(:30deg\) 」の回路ですが、回路図は前回と同じ下記になります。

電圧や抵抗などの値は下記です。
・電圧振幅\((V_{peak}):141V\)
⇒電圧実効値\(:100V_{rms}\)
・抵抗値\((R):100Ω\)
・容量値\((C):18.4μF\)
・周波数\((f):50Hz\)
電圧や抵抗、周波数の値は前回と同じですが、容量値を「\(31.8μF → 18.4μF\) 」にしました。
この容量値「\(18.4μF\) 」の「周波数\((f):50Hz\) 」でのインピーダンス「\(Zc\) 」は、下のように計算できます。
$$Z_C=\displaystyle\frac{1}{\omega C} =\displaystyle\frac{1}{2\pi f C}$$
$$=\displaystyle\frac{1}{2\pi✕50✕18.4✕10^{-6}}$$
$$=173(\Omega) $$
極座標の横軸の電流値は、今回も「抵抗値\((R):100Ω\) 」なので「電圧/抵抗\(=\displaystyle\frac{100V_{rms}}{100\Omega} \) 」で計算でき、「\(1.0A_{rms}\) 」になります。
そうすると、電流位相が「\(30deg\) 」になる縦軸の電流値は「\(1.0A_{rms}✕\tan(30deg) \) 」で計算でき、「\(0.577A_{rms}\) 」になります。
極座標の縦軸の電流値が「\(0.577A_{rms}\) 」になるためには、コンデンサーの「インピーダンス:\(Z_c\) 」は「電圧/電流\(=\displaystyle\frac{100V_{rms}}{0.577A_{rms}} =173\Omega\) 」になる必要があります。
コンデンサーのインピーダンス「\(Zc\) 」が「\(173\Omega\) 」になるコンデンサーの容量値は、上に書いた式を逆から計算すると「\(18.4μF\) 」になることが分かると思います。
言葉だけでは分かりづらいと思いますので、次の項の「交流電流」の極座標のグラフも参考にしてください。
ちなみに、前回投稿の縦軸の電流値は、「\(1.0A_{rms}✕\tan(45deg) \) 」より「\(1.0A_{rms}\) 」でした。
それでは次の項で、「電流位相:\(30deg\) 」のときの電圧と電流、電力の極座標について書きます。
「電流位相:30deg」での電圧、電流、電力の極座標
まず、基準となる電圧を極座標で表すと下記になります。

電圧の極座標は前回と同じですね。
次に、前回の投稿と同じ条件で描いた電流の極座標を下に示します。

前回の投稿との違いは、縦軸の「コンデンサーの電流」が「\(1.0A_{rms} →0.577A_{rms}\) 」に変わっている点です。
この違いにより、「青線」と「紫線」の角度は「\(45deg →30deg\) 」になります。
前回と同様、紫色の矢印の長さ:\(I_{r+c} \)は、三平方の定理で下のように計算できます。
$$ I_{r+c} =\sqrt {Ir^2+Ic^2} $$
$$ =\sqrt {1^2+0.577^2} $$
$$ =1.15 (A_{rms}) $$
位相:\(\theta_{r+c}\)も、前回と同様に下のように計算できます。
$$\theta_{r+c} = \arctan \left(\displaystyle\frac{Ic}{Ir} \right) $$
$$ = \arctan \left(\displaystyle\frac{0.577}{1} \right) $$
$$ =30 (deg) $$
長さと位相をまとめると、下のグラフのように「\(1.15A_{rms} ∠30deg\)」になります。

電圧と電流の「実効値」と「位相」が分かったので、次に電力を求めます。
電力は、基本的に電圧と電流の掛け算で求まりますが、今回のように「極座標」と「極座標」の値を掛け算するときは、「矢印の長さ」はそのまま掛け算すればよくて、「位相」は足し算になります。
具体的には、下のような計算になります。
$$\dot{V} \times \dot{I} = (100V_{rms}\angle 0deg) \times (1.15A_{rms}\angle 30deg) $$
$$ = (100V_{rms} \times 1.15A_{rms}) \angle (0deg+30deg) $$
$$ = 115VA\angle 30deg $$
「\(V\) 」と「\(I\) 」の上にドットを付けていますが、これはこの記号が極座標上の値で、大きさ(矢印の長さ)と方向(位相)をもっていることを表します。
上の計算で求めた電力は「皮相電力」とよばれ、極座標では下の紫色の矢印になります。

前回も書きましたが、この「皮相電力」の「電圧」と同じ「位相:\(0deg\) 」の方向の大きさを「有効電力」とよび、「電圧」の位相と直交している「位相:\(90deg\) 」の方向の大きさを「無効電力」とよびます。
下の極座標のグラフに、その様子を示します。

三角関数を使って、有効電力と無効電力の値を計算すると下記になります。
有効電力\((W)= \)皮相電力\((VA)✕ \cos \theta\)
\(= 115(VA)✕\cos (30deg) \)
\(= 115(VA)✕ 0.866\)
\(= 100(W)\)
無効電力\((var)=\) 皮相電力\((VA)✕ \sin \theta\)
\(= 115(VA)✕\sin (30deg) \)
\(= 115(VA)✕ 0.5\)
\(= 57.7(var)\)
上の式の計算結果「\(100(W)\) 」と「\(57.7(var)\) 」は、上の式に書いた数字より、もう少し桁数を増やして計算した値です。
例えば桁数を5桁まで増やすと、「\(115.47(VA)✕ 0.86603 = 100.00(W)\)」や「\(115.47(VA)✕ 0.5 = 57.735(var)\) 」になります。
上の式の「\(100(W)\) 」や「\(57.7(var)\) 」は、これらの計算結果を四捨五入して3桁表示にしたものです。
次回は、「電流位相\(:-30deg\) 」の場合について書いてみようと思います。
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