自然数から複素数、複素平面へ〔2〕
前回の投稿では、最初は自然数について書いて、最終的にはマイナスからプラスまでの連続した「数」である「実数」について書きましたが、今回はその先の「想像上の数(imaginary number)」について書きます。
自然数から実数
前回の投稿では、「実数」を構成するいくつかの「数」について書きました。
最初は「自然数」で、そのあとは「0」、「マイナスの数」、「整数の分数(有理数)」、「無理数」の順に書きました。
ただ、時間軸で見ると、この順番ではなくなります。
諸説ありますが、自分なりに書いてみます。
最初に「自然数」が使われて、紀元前17世紀頃に「自然数の分数(プラスの有理数)」、紀元前1世紀頃に「マイナスの数」、6世紀頃に「0」が使われるようになったようです。
ただ、「マイナスの数」や「0」は、中国やインドなどでは広まっていったようですが、ヨーロッパでは宗教の影響で受け入れられず、自然科学全体の発展も宗教の影響で停滞したと言われます。
ヨーロッパで「マイナスの数」や「0」が使われ始めたのは、17世紀頃のようです。
残った「無理数」ですが、紀元前6世紀にピタゴラスの弟子のヒッパソスが、正方形の「辺」と「対角線」の比率が、自然数の分数で表すことができない未知の数であることを発見したのが最初と言われています。(下の図参照)

ただ、師匠のピタゴラスは、自然数の分数で表せない数の存在を認めていなかったので、この事実を隠すために、ヒッパソスを処刑したという伝承が残っています。
「ピタゴラスの定理」を使うと、普通に無理数が出てくるので不思議な感じですが、「当時のピタゴラスの定理」は、三角形の辺の比率が「\(3:4:5\) 」といった、自然数の比率で表せる組み合わせに限定していたという話があり、そうだとすれば、ピタゴラスが無理数の存在を認めていなかったという話にも納得できます。
その後も多くの「無理数」が使われてきましたが、正式に「無理数」が定義されたのは19世紀だったようです。
ここまでの「数」は、実際にイメージできて、1本の数直線で表せる「実数」でしたが、次の項では「想像上の数」と表現される「複素数(虚数)」について書きます。
実数から複素数(虚数)
「複素数(虚数)」は、英語では「imaginary number(想像上の数)」と表現します。
個人的には、「虚数」という表現よりも「想像上の数」の方がしっくりきます。
(二次方程式の解の求め方)
例えば、下のような二次方程式があるとします。
$$x^2-2x-3=0$$
このときの「\(x\) 」は、中学で習う下の「解の公式」を使って求めることができます。
$$ax^2+bx+c=0$$
$$x = \frac{-b\pm\sqrt{b^{2}-4ac}}{2a}$$
この「解の公式」を使うと、上に書いた二次方程式の「\(x\) 」は、下のように求めることができます。
$$x = \displaystyle\frac{-(-2)\pm\sqrt{(-2)^{2}-4 \times 1 \times (-3)}}{2 \times 1}$$
$$ = \displaystyle\frac{2\pm\sqrt{4+12}}{2}$$
$$ = \displaystyle\frac{2\pm\sqrt{16}}{2}$$
$$= \displaystyle\frac{2\pm4}{2}$$
$$ =1 \pm 2$$
一応、検算しておきます。
まずは、「 \(x=-1\) 」の場合です。
$$x^2-2x-3$$
$$=(-1)^2-2(-1)-3$$
$$=1+2-3=0$$
次は、「 \(x=3\) 」の場合です。
$$x^2-2x-3$$
$$=(3)^2-2(3)-3$$
$$=9-6-3=0$$
(解の無い二次方程式)
次に、上の二次方程式の「\(c\) 」を、「\(-3\) 」から「\(5\) 」に変更します。
「\(c=5\) 」にした二次方程式は下になります。
$$x^2-2x+5=0$$
この式にも解の公式を使うと、「\(x\) 」は下のように計算できます。
$$x = \displaystyle\frac{-(-2)\pm\sqrt{(-2)^{2}-4 \times 1 \times 5}}{2 \times 1}$$
$$= \displaystyle\frac{2\pm\sqrt{4-20}}{2}$$
$$= \displaystyle\frac{2\pm\sqrt{-16}}{2}$$
$$= \displaystyle\frac{2\pm 4\sqrt{-1}}{2}$$
$$= 1 \pm 2\sqrt{-1}$$
中学の数学では、「\(\sqrt{-1}\) 」が出てきた時点で「解なし」でした。
(解の無い二次方程式の解)
でも、この「\(x= 1 \pm 2\sqrt{-1}\) 」が解だとして、検算してみます。
まずは、「 \(x=1-2\sqrt{-1}\) 」の場合です。
$$x^2-2x+5$$
$$=(1-2\sqrt{-1})^2-2(1-2\sqrt{-1})+5$$
$$=(1^2-4\sqrt{-1}+(-2\sqrt{-1})^2)-(2-4\sqrt{-1})+5$$
$$=(1-2+5)+(-4\sqrt{-1}-(-4\sqrt{-1}))+((-2)^2 \times (\sqrt{-1})^2)$$
$$=(4)+(0)+(4 \times (-1))$$
$$=4-4=0$$
次は、「 \(x=1+2\sqrt{-1}\) 」の場合です。
$$x^2-2x+5$$
$$=(1+2\sqrt{-1})^2-2(1+2\sqrt{-1})+5$$
$$=(1^2+4\sqrt{-1}+(2\sqrt{-1})^2)-(2+4\sqrt{-1})+5$$
$$=(1-2+5)+(4\sqrt{-1}-4\sqrt{-1})+((2)^2 \times (\sqrt{-1})^2)$$
$$=(4)+(0)+(4 \times (-1))$$
$$=4-4=0$$
上の二つの計算には、少し計算を簡単にするために下の公式を使いました。
$$(a+b)^2=a^2+2ab+b^2$$
解に「\(\sqrt{-1}\) 」が出てきても「解なし」とせず、「\(\sqrt{-1}\) 」を「数」として扱うことで、計算を続けることができたり、計算を容易できることなどから、「\(\sqrt{-1}\) 」が「数」として認められていきました。
(複素数の説明)
この「\(\sqrt{-1}\) 」を、一般的には「\(i\) 」という記号で表しますが、電気の世界では電流に「\(i\) 」を使うので「\(j\) 」を使います。
この「\(i\) 」を使うと、先ほどの二次方程式の解は下のように表せます。
$$x= 1 \pm 2i$$
これを一つの「数」として扱い、「複素数」や「虚数」とよびます。
「複素数」「実数」「虚数」の使い分けは、下の図のようになります。

「複素数:\(a+bi\) 」で「\(b=0\) 」の場合が「実数:\(a\) 」です。
「複素数:\(a+bi\) 」で「\(b≠0\) 」の場合が「虚数:\(a+bi\) 」です。
「複素数:\(a+bi\) 」で「\(a=0\) 」、「\(b≠0\) 」の場合は「純虚数:\(bi\) 」です。
蛇足ですが、「\(a\) 」も「\(b\) 」も「\(0\) 」の場合は「実数:\(0\) 」です。
(複素平面の説明)
この「純虚数」は、「実数」の数直線上に無いので、もう一つ数直線に書くと下のようになります。

これでも、少し「実数」と「虚数」をイメージできる気がしますが、昔の人はもっとよい方法を思いつきました。
「実数」の数直線上に「虚数」が無いなら、「実数」の数直線の上下方向に「虚数」の数直線を伸ばす方法です。
その様子を下に示しますが、横軸を「実数」の軸で「実軸」とし、縦軸を「虚数」の軸で「虚軸」としました。

この「実軸」と「虚軸」で構成される平面が「複素平面」です。
この「複素平面」に、例えば「複素数:\(z=3+4i\) 」をプロットすると下記になります。

これは、これまで「電流の大きさ」や、「電圧に対する電流の位相差」を表すのに使用してきた「極座標」に似ています。
「複素数:\(z\) 」の絶対値の大きさ「\(|z|\) 」は、下のように計算できます。
$$|z|=\sqrt {3^2+4^2} =\sqrt {9+16} =\sqrt {25} =5$$
「実軸」に対する「複素数:\(z\) 」の角度「\(\theta _{z}\) 」は、下のように計算できます。
$$\theta_{z}=\arctan \left(\displaystyle\frac{4}{3} \right)=53.13(deg)$$
「\(\arctan \theta\) 」と「\(\tan^{-1} \theta\) 」は、表現が異なるだけで同じ関数です。
これらの計算も、やはり「極座標」と同じですね。
これまで、電圧や電流の大きさや位相を表すのに「極座標」を使用してきましたが、これからはこの「複素平面」も使っていきます。
「複素平面」には、自分の知っている活用法と、自分の知らない多くの活用法があると思います。
ただ、活用法を一つひとつ書いても面白味がないので、電気の計算で活用する方法について書いていこうと思います。
よろしければ以下のバナーをクリックしていただけると励みになります!

にほんブログ村

科学ランキング