「かかと落とし」でかかとにかかる荷重

「かかと落とし」といっても格闘技の技ではなく、血糖値を下げる効果があるとテレビで放送していたエクササイズですが、試してみると想像以上に衝撃が強く、かかとにどのくらいの荷重がかかっているのか気になったので計算してみました。

「かかと落とし」とは

「かかと落とし」の説明にぴったりなイラストが、フリー素材集の「いらすとや」にありました。

「いらすとや」に感謝しつつ、さっそく使わせていただきます。

このイラストを見ると一目瞭然ですが、つま先立ちした後で、かかとを一気に落とすというエクササイズで、一日に30回くらい行うことが推奨されています。

食後すぐに実施すると、インスリンの分泌が促されて血糖値を下げる効果が期待できるようですが、食後すぐでなくても効果はあるそうです。

少し調べると、〔運動効果〕と〔骨刺激効果〕があると書かれていました。

〔運動効果〕

① 有酸素運動により、筋肉の血流量が増える

② 血液中のブドウ糖が細胞の中に取り込まれる

③ インスリンの効果が高まり血糖値が下がる

〔骨刺激効果〕

① 骨への刺激により、オステオカルシンというホルモンが分泌される

② オステオカルシンがすい臓に作用して、インスリンの分泌を促す

③ それと同時に、細胞のインスリン感受性が向上

④ さらにオステオカルシンはGLP-1の分泌を促し、その働きでインスリンの分泌が増加

⑤ インスリンの働きで血糖値が下がり、全身の代謝を改善

これが本当なら、良いことだらけに思えます。

それならとやってみたのですが、かかとを落とした瞬間の衝撃が予想以上に大きく、集合住宅で行うと近所迷惑になりそうです。

さらに体への衝撃も大きく、これを30回もやると「かかと」や体に悪いのでは?という気持ちになりました。

なので、「かかと落とし」を行ったとき、かかとにかかる荷重を計算してみました。

「かかと落とし」の想定

まず、つま先立ちになったとき、体がどのくらい持ち上がるかですが、頭の位置で測定して「5cm」としました。

次に、「かかと落とし」した瞬間に、床や体がどのくらい変形して衝撃を吸収するかですが、これはエイヤで「1cm」としました。

計算式を立てるために使用する記号を、下のように決めました。

〔かかとを落とすとき〕

① \(S_d \) :つま先立ち時に体が持ち上がった高さ(5cm)

② \(g\) :重力加速度

③ \(t_d \) :かかとを落とし始めて床に着くまでの時間

④ \(v_d \) :かかとが床に着いた瞬間の体の落下速度

〔落としたかかとが停止するとき〕

⑤ \(S_b \) :かかとが床に着いて体の落下が停止するまで距離(1cm)

⑥ \(a\) :かかとが床に着いて体の落下が停止するまでに体が受ける加速度

⑦ \(t_b \) :かかとが床に着いて体の落下が停止するまでの時間

それでは次の項で、「③ \(t_d \) 」と「④ \(v_d \) 」と「⑥ \( a \) 」を求めます。

「かかと落とし」の計算

数年前に、位置エネルギーや運動エネルギーの投稿を書きましたが、計算式はその時の式を使います。

まず、5cmの高さから体が自由落下したとして、かかとが床に着くまでの時間「③ \(t_d \) 」を計算します。

下に、前の項の「① \( S_d \) 」「② \( g \) 」「③ \( t_d \) 」の関係式を示します。

$$S_d=\displaystyle\frac{1}{2} g {t_d}^2 $$

この式を「\(t_d =\) 」の形に変形して、自由落下時間「③ \(t_d \) 」を計算します。

$$S_d=\displaystyle\frac{1}{2} g {t_d}^2 $$

$$ g {t_d}^2 =2 S_d$$

$$ t_d =\sqrt{\displaystyle\frac{2 S_d}{g}}$$

$$ t_d =\sqrt{\displaystyle\frac{2 \times 0.05}{9.8}} \simeq 0.101 (s)$$

5cmの高さからの自由落下時間は、約0.101秒だと分かりました。

この自由落下時間:約0.101秒を使って、かかとが床に着く瞬間の落下速度「④ \(v_d \) 」を計算します。

「② \(g \) 」「③ \(t_d \) 」「④ \(v_d \) 」の関係式は、下記になります。

$$v_d = g t_d \simeq 9.8 \times 0.101 \simeq 0.99(m/s)$$

5cmの高さからの落下したとき、床に着く瞬間の落下速度は約1m/sなので、ゆっくりめに歩くくらいのスピードです。

最後に、落下衝撃の吸収距離を1cmとしたときに、かかとが受ける加速度「⑥ \(a\) 」を計算します。

まず、「⑤ \(S_b \) 」「⑥ \(a \) 」「⑦ \(t_b \) 」の関係式を下に示します。

$$S_b=\displaystyle\frac{1}{2} a {t_b}^2 $$

次に、約1m/sの落下速度が、時間「\(t_b \) 」で停止することを表す式を下に示します。

$$v_d-a t_b = 0 (m/s) $$

この式を変形して「\(t_b= \) 」の形にします。

$$v_d -a t_b =0$$

$$a t_b = v_d$$

$$t_b = \displaystyle\frac{v_d}{a}$$

この「\(t_b= \) 」の右側の式を、上の⑤⑥⑦の関係式に代入します。

$$S_b=\displaystyle\frac{1}{2} a {t_b}^2 $$

$$S_b=\displaystyle\frac{1}{2} a \left( \displaystyle\frac{v_d}{a}\right) ^2 $$

$$S_b=\displaystyle\frac{1}{2} a \left( \displaystyle\frac{{v_d}^2}{a^2}\right) $$

$$S_b=\displaystyle\frac{{v_d}^2}{2a} $$

この式を、「\(a= \) 」の形に変形し、数値を代入して加速度:\(a\)を計算します。

$$S_b=\displaystyle\frac{{v_d}^2}{2a} $$

$$a=\displaystyle\frac{{v_d}^2}{2S_b} = \displaystyle\frac{{0.99} ^2}{2 \times 0.01} \simeq 49.0(m/s^2) $$

この加速度:\(a\)が、重力加速度:\(g\)の何倍かを計算します。

$$\displaystyle\frac{a}{g} = \displaystyle\frac{49.0}{9.8} =5$$

$$a = 5g $$

上に書いた条件で、「かかと落とし」時に「かかと」にかかる荷重は体重の5倍です。

自分の場合、260kgくらいの荷重がかかとにかかったことになります。

ちなみに、その荷重がかかる時間は「\(t_d \) 」なので、下記で計算できます。

$$t_b = \displaystyle\frac{v_d}{a} = \displaystyle\frac{0.99}{49} \simeq 0.02(s) $$

時間的には0.02秒くらいなので、一瞬ですね。

余談ですが、\(a \)が何\(g\)になるかは、エネルギー保存の法則を使って下の式でも計算できます。

$$m g S_d = m a S_b $$

$$g S_d = a S_b $$

$$a = \displaystyle\frac{S_d}{S_b} g = \displaystyle\frac{0.05}{0.01} g $$

$$a = 5 g $$

以上のことから、「かかと落とし」はつま先立ちからの「自由落下」は避け、かかとに適度な衝撃が加わるように落下のスピードを調整した方が良さそうというのが、個人的な結論です。

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