交流電圧を加えたコンデンサーと抵抗に流れる電流〔4〕(周波数ー電流振幅/位相グラフ)
今回は、前回の投稿〔3〕で最後に書いた「周波数」「電流振幅」「位相」の表から横軸「周波数」のグラフを描き、「電流振幅」と「位相」が「周波数」でどう変化するかを書きます。
前回の投稿〔3〕の回路図と「周波数」「電流振幅」「位相」の表の振り返り
今回も、前回の投稿〔3〕の内容を簡単に書いておきます。
まず、回路図は下記です。
この回路図は、左側に電圧源があり、右のコンデンサーと抵抗に接続されています。
想定した電圧振幅などの値は下記です。
・電圧振幅(Vpeak):141V
・抵抗値(R):141Ω
・容量値(C):22.5μF
前回は、電圧源の周波数が5Hzから500Hzまで変化したときに、下に示す各値がどう変化するかを計算し、結果を表にまとめました。
・抵抗に流れる電流振幅
・コンデンサーに流れる電流振幅
・上の二つの電流を足し合わせた電流振幅
・上の足し合わせた電流波形の位相(電圧源の波形が基準)
これらの計算結果を下の表に示します。
前回書いたのは、この辺りまでです。
電流振幅と位相のグラフ
今回は、上の表に下の2項目を追加します。
・抵抗に流れる電流波形の位相(0 deg)
・コンデンサーに流れる電流波形の位相(90 deg)
この二つを追加した表を下に示します。
この表は左端の「周波数」を除くと、左側3項目の「電流振幅」と、右側3項目の「電流位相」に分かれます。
まず、左側3項目の「電流振幅」をグラフ化した画像を下に示します。
この表を見ると、変化の中心である「周波数:50Hz」付近が左下に小さく表示されていて、よく見えません。
「周波数:50Hz」付近の変化を見やすくするため、このグラフの縦軸と横軸を「ログスケール(対数目盛)」にしてみます。
このグラフを見ると、「周波数:50Hz」でコンデンサーと抵抗に流れる電流振幅が等しくなっている(両方1A)ことが分かります。
このグラフの縦軸を「dB」で表すと下記になります。
このグラフは、縦軸の「1A」を「0dB」としているので、周波数で変化する電流振幅を「\(I(A)\) 」とすると、縦軸は「\(20✕\log \displaystyle\frac{I(A)}{1(A)} \) 」で計算できます。(カッコ内のAは電流の単位:アンペアです。)
上の二つのグラフで異なるのは縦軸だけで、赤、青、紫の線は同じ形です。
このときの電流位相のグラフは下記になります。
このグラフを見ると、左右の端が切れているように見えるので、次の項では周波数の範囲を、「5~500Hz」から「0.1~10000Hz(=10kHz)」に拡大します。
電流振幅と位相のグラフの横軸を拡大
横軸の周波数を、「0.1~10000Hz(=10kHz)」に拡大すると表は下記になります。
表が上下方向にずいぶん伸びました。
この表の値で電流振幅と電流位相のグラフを作成すると、下記になります。
それでは最初に、上の電流振幅のグラフについて書きます。
左の方の低い周波数では、コンデンサーに流れる電流が小さいので、「電流振幅@R+C」に流れる電流は、ほぼ抵抗に流れる電流になります。
逆に右の方の高い周波数では、コンデンサーに流れる電流が大きいので、「電流振幅@R+C」に流れる電流は、ほぼコンデンサーに流れる電流になります。
赤い線と青い線が交差している点が50Hzで、二つの電流が等しくなっています。
次に、下の電流位相のグラフについて書きます。
こちらも左の方の低い周波数では、コンデンサーに流れる電流が小さくなるので、「電流位相@R+C」は、ほぼ「電流位相@R」の「位相:0 deg」になります。
逆に右の方の高い周波数では、コンデンサーに流れる電流が大きくなるので、「電流位相@R+C」は、ほぼ「電流位相@C」の「位相:90 deg」になります。
コンデンサーと抵抗に流れる電流が等しくなる「周波数:50Hz」では、「電流位相@R+C」は中間の「位相:45 deg」になります。
ボード線図
前の項に貼り付けた二つのグラフですが、これらは広い意味で「ボード線図」といえると思います。
通常の「ボード線図」は、「周波数ーゲイン(増幅率/減衰率)特性」と「周波数ー位相特性」のグラフを上下に並べて、回路の入力→出力間の周波数特性を表します。
今はExcelを使って、滑らかな「ボード線図」を簡単に描くことができますが、自分が回路設計をしていた40年前は、下のグラフに黒い点線で追記した近似直線を使いました。
ボード線図は、オペアンプなどを使った「負帰還回路」が発振しないかを確認する目的でよく使いました。
先輩から「この回路の位相余裕(発振しないための余裕)は何度あるの?」とか聞かれたときに、この「ボード線図」を使って説明していました。
大学の制御工学という授業では、「ナイキスト線図」を使う方法を習ったと思いますが、あまり使ったことがなく、自分にとって直感的に分かりやすい「ボード線図」を使いました。
今はまだ「電気回路」のくくりで記事を書いていますが、「電子回路」のくくりで書くときには、この辺りの話も書きたいと思います。
ただ、そこまでたどり着くのは、今のペースだと仕事をリタイヤする2年以上先になりそうです。
もう一つ、「ボード線図」で大切なことがあります。
横軸が「経過時間」ではなく、「周波数」になっている点です。
これまでの投稿は、横軸「時間」のグラフが多かったと思いますが、この先は横軸「周波数」のグラフが増えると思います。
それに伴い、電圧や電流などを、「時間」ではなく「周波数」から直接計算する計算式についても書く予定です。
この「周波数」には、「角周波数(ω=2πf)」を含みます。
ただ、その前にまず「コンデンサー」を「コイル」に置き換えて、「交流電圧を加えたコイルと抵抗に流れる電流」について書きます。
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