交流電圧を加えたコイルと抵抗に流れる電流〔1〕(周波数変化時の波形と振幅/位相グラフ)

前回までの投稿の「コンデンサー」を、今回は「コイル」に置き換えて書きますが、「コンデンサー」の投稿の〔1〕と〔2〕は省略して、〔3〕の内容から書きます。

使用する回路と電流波形

それでは最初に、今回の投稿に使用する回路図を下に示します。

前回までの「コンデンサー」を「コイル」に置き換えた構成です。

電圧振幅や、コイルのインダクタンスなどの値は下記になります。

・電圧振幅(Vpeak):141 V(実効値:100Vrms

・電圧の角周波数(ω):100π rad/s

 ⇨ ω=2πf =2π (rad)✕50 (Hz) =100π (rad/s)

・抵抗値(R):141 Ω

・インダクタンス値(L):0.45 H(ヘンリー)

ここで、「角周波数:100π rad/s(周波数:50 Hz)」のときのコイルの「抵抗値(インピーダンス値:Z)」を計算すると下記になります。

$$Z=\omega L=2\pi f L=2✕\pi ✕50 ✕0.45=141 (\Omega) $$

次に、回路図の「抵抗に流れる電流:I(t)R」と、「コイルに流れる電流:I(t)L」と、「抵抗とコイルを合わせた電流:I(t)R+I(t)L」の波形を、それぞれ「青色」「赤色」「紫色」で表した画像を下に示します。

コンデンサーとの比較用として、前回投稿の「コンデンサーに流れる電流:I(t)C」の波形を「赤色」で表した画像を下に示します。

上と下のグラフで変化しない、「青色」の抵抗のトレースを基準にして、「赤色」のトレースを比較してみます。

下側のコンデンサーのグラフの「赤色のトレース」は位相が90deg進んでおり、上側のコイルのグラフの「赤色のトレース」は位相が90deg遅れていることが分かります。

振幅/位相グラフ

次に、「抵抗」と「コイル」の電流波形の「振幅/位相グラフ」を下に貼り付けます。

下のグラフは「抵抗」と「コンデンサー」の「振幅/位相グラフ」ですが、上のグラフと比較すると「赤色」の矢印の向きが上下逆になっていることが分かります。

それにより、「紫色」の矢印の向きは、「斜め上」と「斜め下」になっています。

矢印の長さは電流の振幅を表しますが、上下のグラフで矢印の長さは変わりません。

矢印の向きは電流の位相で、「コイル」の「赤色の矢印」は下向きなので90deg遅れ、「コンデンサー」の「赤色の矢印」は上向きなので90deg進んでいます。

「青色の矢印」は抵抗に流れる電流で、電圧と同じ位相になるので、矢印の向きは右向きです。

さて、ここまで「周波数:50Hz(角周波数:100π rad/s)」の場合について書いてきましたが、次の項ではまず「周波数:5~50Hz(角周波数:10π~100π rad/s)」の場合について書きます。

周波数:5~50Hzでの電流波形と電流振幅/位相グラフ

それでは最初に、周波数が50Hz、20Hz、10Hz、5Hzと低くなったときに、「電流波形」と「電流振幅/位相」のグラフがどう変化するかを書きます。

今回も左側のグラフは、周波数の変化に対して見た目の波形周期が変わらないよう、横軸の経過時間の目盛りを調整しました。

また、周波数が低下すると、コイルに流れる電流が増えて波形がグラフからはみ出すので、左側のグラフの縦軸と、右側のグラフの縦軸/横軸の目盛りを調整しました。

少し見づらいと思いますが、「抵抗の電流波形(青色のトレース)」の「電流振幅」は変わらないので、それを基準にしてください。

【50Hz(周期:20ms)】

下のグラフは前の項と同じ50Hzのときのグラフで、基準として置きました。

【20Hz(周期:50ms)】

周波数が50Hzから20Hzに下がって5分の2になると、左側のグラフの波形周期は2.5倍になるので、波形周期は20msから50msになります。

見た目の周期を保つため、左側のグラフの横軸を一目盛り5msから、2.5倍の12.5msにしました。

周波数が5分の2に下がると、コイルの電気抵抗も5分の2になるので、コイルに流れる電流は2.5倍になって、電流振幅は1Aから2.5Aに増えます。(赤色の波形)

そうすると、電流波形がグラフから上下に飛び出してしまうので、左のグラフの縦軸は一目盛り0.5Aから1Aに、右のグラフの縦軸/横軸は一目盛り0.2Aから1Aにしました。

抵抗に流れる電流(青色の波形)は周波数が変わっても振幅が1Aなので、青色の波形を基準にして、赤色や紫色の波形の変化を見てください。

左側のグラフでは、紫色の波形が赤色の波形に近づいています。

【10Hz(周期:100ms)】

周波数が50Hzから10Hzに下がって5分の1になると、左側のグラフの波形周期は5倍になるので、波形周期は20msから100msになります。

見た目の周期を保つため、左側のグラフの横軸を一目盛り5msから、5倍の25msにしました。

周波数が5分の1に下がると、コイルの電気抵抗も5分の1になるので、コイルに流れる電流は5倍になって、電流振幅は1Aから5Aに増えます。(赤色の波形)

そうすると、電流波形がグラフから上下に飛び出してしまうので、左のグラフの縦軸は一目盛り0.5Aから2Aに、右のグラフの縦軸/横軸は一目盛り0.2Aから2Aにしました。

抵抗に流れる電流(青色の波形)は周波数が変わっても振幅が1Aなので、青色の波形を基準にして、赤色や紫色の波形の変化を見てください。

左側のグラフでは、紫色の波形が赤色の波形にさらに近づいています。

【5Hz(周期:200ms)】

周波数が50Hzから5Hzに下がって10分の1になると、左側のグラフの波形周期は10倍になるので、波形周期は20msから200msになります。

見た目の周期を保つため、左側のグラフの横軸を一目盛り5msから、10倍の50msにしました。

周波数が10分の1に下がると、コイルの電気抵抗も10分の1になるので、コイルに流れる電流は10倍になって、電流振幅は1Aから10Aに増えます。(赤色の波形)

そうすると、電流波形がグラフから上下に飛び出してしまうので、左のグラフの縦軸は一目盛り0.5Aから5Aに、右のグラフの縦軸/横軸は一目盛り0.2Aから2Aにしました。

抵抗に流れる電流(青色の波形)は周波数が変わっても振幅が1Aなので、青色の波形を基準にして、赤色や紫色の波形の変化を見てください。

ここまでくると、左側のグラフの紫色と赤色の波形がほとんど重なっています。

周波数:50~500Hzでの電流波形と電流振幅/位相グラフ

それでは次に、周波数が50Hz、100Hz、200Hz、500Hzと高くなったときに、「電流波形」と「電流振幅/位相」のグラフがどう変化するかを書きます。

今回も左側のグラフは、周波数の変化に対して見た目の波形周期が変わらないよう、横軸の経過時間の目盛りを調整しました。

ただ、周波数が高くなるとコイルに流れる電流は減りますが、抵抗に流れる電流は変わらないので電流の目盛りは変えていません。

【50Hz(周期:20ms)】

下のグラフは最初と同じ50Hzのときのグラフで、3回目の掲載となりますが基準として置きました。

【100Hz(周期:10ms)】

周波数が50Hzから100Hzに上がって2倍になると、左側のグラフの波形周期は2分の1になるので、波形周期は20msから10msになります。

見た目の周期を保つため、左側のグラフの横軸を一目盛り5msから、2分の1の2.5msにしました。

周波数が2倍に上がると、コイルの電気抵抗も2倍になるので、コイルに流れる電流は2分の1になって、電流振幅は1Aから0.5Aに減ります。(赤色の波形)

抵抗に流れる電流(青色の波形)は周波数が変わっても振幅が1Aなので、青色の波形を基準にして、赤色や紫色の波形の変化を見てください。

左側のグラフでは、紫色の波形が今度は青色の波形に近づいています。

【200Hz(周期:5ms)】

周波数が50Hzから200Hzに上がって4倍になると、左側のグラフの波形周期は4分の1になるので、波形周期は20msから5msになります。

見た目の周期を保つため、左側のグラフの横軸を一目盛り5msから、4分の1の1.25msにしました。

周波数が4倍に上がると、コイルの電気抵抗も4倍になるので、コイルに流れる電流は4分の1になって、電流振幅は1Aから0.25Aに減ります。(赤色の波形)

抵抗に流れる電流(青色の波形)は周波数が変わっても振幅が1Aなので、青色の波形を基準にして、赤色や紫色の波形の変化を見てください。

左側のグラフでは、紫色の波形が青色の波形にさらに近づいています。

【500Hz(周期:2ms)】

周波数が50Hzから500Hzに上がって10倍になると、左側のグラフの波形周期は10分の1になるので、波形周期は20msから2msになります。

見た目の周期を保つため、左側のグラフの横軸を一目盛り5msから、10分の1の0.5msにしました。

周波数が10倍に上がると、コイルの電気抵抗も10倍になるので、コイルに流れる電流は10分の1になって、電流振幅は1Aから0.1Aに減ります。(赤色の波形)

抵抗に流れる電流(青色の波形)は周波数が変わっても振幅が1Aなので、青色の波形を基準にして、赤色や紫色の波形の変化を見てください。

ここまでくると、左側のグラフの紫色と青色の波形がほとんど重なっています。

ここまで、周波数が変化したときの「電流波形」、「電流振幅/位相」のグラフを描きましたが、それぞれの周波数での「電流振幅」と「位相」の値を次の項で表にまとめます。

周波数変化による「電流振幅」と「位相」の変化

下の表に、これまでの各周波数での「電流振幅」と「位相」の値を書きました。

「周波数:50Hz」のとき、「抵抗とコイル」に流れる電流の「電流振幅」と「位相」は「1.41A」と「-45deg」ですが、「周波数:5Hz」ではコイルの値に近づき、「周波数:500Hz」では抵抗の値に近づきます。

次回はこの表の値を、「周波数」を横軸、「電流振幅」と「位相」を縦軸にしたグラフを描き、「周波数」によって「電流振幅」と「位相」がどう変化するかを書く予定です。

よろしければ以下のバナーをクリックしていただけると励みになります!

にほんブログ村 科学ブログへ
にほんブログ村 科学ランキング
科学ランキング