電気回路_コイルの動作【直流】〔3〕
前回は、コイルに定電圧源を接続しましたが、今回はコイルに定電流源を接続したときの動作について書きます。
コイルに定電流源を接続
コイルに定電流源を接続したときの回路図は下のようになります。

回路図の左側に〇と↑を描いていますが、これが定電流源の記号です。
この定電流源は、一定の電流:\(I\)(A_アンペア)を矢印の方向に流します。
その電流は配線を経由して、右のコイルの上から下に向かって流れます。
このときコイルに流れる電流と両端の電圧は、縦軸を電圧と電流、横軸を経過時間にすると下のグラフのようになります。

コイルに流れる電流が変化しないと、コイル両端の電圧は\(0V\)です。
比較のため、定電流源にコンデンサーを接続したときの回路図とグラフを下に示します。


コイルのときと同じように、コンデンサーの上から下へ一定の電流が流れると、今度は時間の経過とともに電圧が上昇していきます。
前回の定電圧源の投稿と比べると、グラフの見た目がコンデンサーとコイルで逆になっています。
コイルに定電流源を接続した瞬間の動き
前の項では、コイルやコンデンサーに最初から一定の電流が流れているとしました。
この項では、電流が流れていないコイルやコンデンサーに、定電流源を接続した瞬間に着目します。
回路図は同じですが、経過時間\(0\) 秒のときの電流を\(0 A\)(アンペア)とします。
そして次の瞬間、電流が一気に\(「I」A\)(アンペア)まで増えるとします。
このときコイルに流れる電流と両端の電圧は、縦軸を電圧と電流、横軸を経過時間にすると下のグラフのようになります。

経過時間\(0\)秒までは電流が流れておらず、\(0\)秒になった瞬間に電流が\(「I」A\)(アンペア)になったときの電流と電圧です。
電流が\(「I」A\)(アンペア)になった瞬間、コイルにはとても大きな電圧が生じますが、電流が一定になるとすぐ電圧は\(0V\)に戻ります。
ちなみに、コンデンサーに定電流源を接続すると、コンデンサーに流れる電流と両端の電圧は、縦軸を電圧と電流、横軸を経過時間にすると下のグラフのようになります。

電流が最初から流れている場合との違いは、0秒のときにコンデンサーの電圧が0Vになる点だけで、そのあとの傾斜などは同じです。
コイルに定電流源を接続した瞬間のシミュレーション結果
それでは今回も、電子回路シミュレーターに具体的な数値を入れて、電圧がどのように変化するかを確認します。
ここから電圧の記号は、\(E\)ではなく\(V\)を使用します。
式にすると、\(V\)の方がしっくりくるので‥。
電流源は、経過時間0秒での電流値は0A(アンペア)とし、次の瞬間に1A(アンペア)になるとしたいので、具体的には下記のように設定しました。
〔定電流源〕
0秒 ⇒ 0.9n秒 :0A(アンペア)
0.9n秒 ⇒ 1n秒:0A(アンペア) ⇒ 1A(アンペア)
1n秒以降 :1A(アンペア)
コイルのインダクタンス:Lは前回と同じ1H(ヘンリー)とします。
細かくは下記のように設定しました。
〔コイル〕
インダクタンス:1H(ヘンリー)
コイル内部の直流抵抗:1mΩ
シミュレーションに使用した回路図は下記になります。

この回路で、コイル両端の電圧値と電流値を時間軸でシミュレーションした結果を下に示します。

少し見づらいと思いますが、0秒のところで電流(赤のトレース)が0A(アンペア)⇒ 1A(アンペア)に増えています。
電圧(青のトレース)は、電流値が変化していないと、0V(ボルト)になっているように見えますが、0秒のところで10GV(ギガボルト)と、とんでもなく高い電圧になっています。
この0秒付近の時間を拡大したシミュレーション結果を下に示します。

電流(赤のトレース)が0.9n秒(ナノ秒)から増え始め、1.0n秒(ナノ秒)で1A(アンペア)に達してからは一定になっています。
電圧(青のトレース)は、電流(赤のトレース)が一定の傾斜で増えているときだけ10GV(ギガボルト)に上昇し、その後は0V(ボルト)に戻っています。
これは、前回の投稿で書いたコイルの電圧:\(V\)、電流:\(I\)、インダクタンス:\(L\)、経過時間:\(t\)の間に成り立つ下の関係式で説明できます。
$$V=L\displaystyle\frac{ΔI}{Δt}$$
この関係式の\(L\)に1H(ヘンリー)、\(ΔI\)に1A(アンペア)、\(Δt\)に0.1n秒(ナノ秒)を入れて計算すると下記になります。
$$V=L\displaystyle\frac{ΔI}{Δt}$$
$$=1(H)✕\displaystyle\frac{1(A)}{0.1✕10^{-9}(秒)}$$
$$=1✕\displaystyle\frac{1}{0.1✕10^{-9}}(V)$$
$$=10✕10^9(V)$$
$$=10(GV)$$
シミュレーション結果の10GV(ギガボルト)は、この計算結果と一致しています。
コンデンサーに定電流源を接続したときのシミュレーション結果
今回もコンデンサーに定電流源を接続したときのシミュレーション結果も書いておきます。
コイルのシミュレーション条件との違いは、インダクタンス1H(ヘンリー)コイルを、キャパシタンス:1F(ファラッド)のコンデンサーに置き換えた点だけです。
〔コンデンサー〕
キャパシタンス:1F(ファラッド)
コンデンサー内部の直流抵抗:無限大
シミュレーションに使用した回路図は下記になります。

この回路で、コンデンサーの両端の電圧値と電流値を時間軸でシミュレーションした結果を下に示します。

キャパシタンス:1F(ファラッド)のコンデンサーに、1A(アンペア)の電流を流すと、電圧は1秒間に1V(ボルト)ずつ上昇して、10秒間で10V(ボルト)に達します。
これは、前の投稿でも書いた電流:\(I\)、時間:\(t\)、キャパシタンス:\(C\)、電圧\(V\)の間に成り立つ下記の関係式から求まります。
$$CV=It=Q$$
$$\displaystyle\frac{V}{t}=\displaystyle\frac{I}{C}$$
$$=\displaystyle\frac{1(A)}{1(F)}$$
$$=1(V/s)$$
ここでは、キャパシタンス:\(C\)はもちろん、電流:\(I\)も一定なので、単位時間当たりの電圧変化量:\(\displaystyle\frac{E}{t}\)も一定になることから、この表現にしました。
電流が変化する場合の一般的な関係式は下記になります。
$$v=\displaystyle\frac{1}{C}\int{i}dt$$
電圧の記号に「\(V\)」ではなく「\(v\)」、電流の記号に「\(I\)」ではなく「\(i\)」を使用していますが、これは電圧と電流が時間によって変化する場合に使用する一般的な表現方法です。
基本的な関係式としては、先ほどの\(CV=It\)と同じですが、\(v\)や\(i\)が変化する場合、積分の説明で書いたように、短い時間幅「\(dt\)」と、その短い時間幅の間に変化する「\(i\)」を掛け算することで、短い時間幅の間に変化する電荷量「\(dQ\)」を求めることができます。
その「\(dQ\)」をキャパシタンス:\(C\)で割り算すると、短い時間幅「\(dt\)」の間に変化する電圧「\(dv\)」が求まります。
この短い時間幅「\(dt\)」の間に変化する「\(dv\)」を足し合わせていくことで、例えば0秒から10秒の間に変化する電圧を計算することができます。
次回は、コンデンサーとコイル、定電圧源と定電流源の動作を整理しようと思います。
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