コイルに加えた交流電圧・電流〔4〕(交流の電流波形から電圧波形をイメージ)

前回は、交流電流を加えたときのコイル両端の電圧波形を計算で求めましたが、今回は電流と電圧の波形をイメージで考えます。

想定する回路と電流波形

想定する回路は前回と同じです。

「周波数:50Hz」「実効値:1Arms」の交流電流源に、「50Hzで100Ωの抵抗値」になる「インダクタンス値:0.32H(ヘンリー)」のコイルを接続した回路です。

まず、回路図左側の電流源「\(I(t)=I_{peak} \sin (\omega t)\) 」の波形は下記になります。

右のグラフは「Ipeak=1.41(A)」「ω=2πf=2π✕50=100π (rad/s) 」としたときの「\(I(t)\)」のグラフです。

周波数は「50Hz」なので波形の周期は「20ms」になり、「0ms」で「0A」、「5ms」で「1.41A」、「10ms」で再び「0A」、「15ms」で「-1.41A」、「20ms」で元の「0A」に戻ります。

このとき、コイルの両端に生じる電圧波形は下記です。

これらの波形をベースに、まずは「経過時間:0ms」の波形から見ていきます。

経過時間:0ms

前の項の波形を、もう一度貼りつけます。

上の赤い線のグラフが電流、下の青い線のグラフが電圧です。

「経過時間:0ms」付近の電流は、増加方向に最大傾斜なので、コイル両端の電圧は最大になります。

これは、下の関係式を見ると理解しやすいと思います。

$$V(t)=L\displaystyle\frac{dI(t)}{dt}$$

「イメージ」と言いながら式を使って申し訳ないのですが、やはり式を見ると分かりやすく感じます。

コイル両端の電位差に比例して、増減する電流の傾斜が変化しますが、逆に増減する電流の傾斜が変化したときも、コイル両端に生じる電位差はその傾斜に比例します。

また、電流の上昇する傾斜が、「経過時間:0ms」までは次第に急になり、「経過時間:0ms」を過ぎると次第に緩やかになるので、電圧は上昇から降下に転じます。

その様子は太い赤線と、太い青線が表しています。

左の単位円のグラフで「経過時間:0ms」の電流波形と電圧波形の位相を比べると、電流に対して電圧は「\(\displaystyle\frac{\pi}{2}(⇒90°)\)」進んでいます。

経過時間:5ms

次に、5ms経過時の電流と電圧の波形です。

「経過時間:5ms」で電流値は最大の1.41Aになっていますが、このときの電流は増えも減りもしない状態なので、コイル両端の電圧は「0V」になります。

また、「経過時間:5ms」の前後で電流は増加から減少に転じますので、電圧は「0V」をはさんで「プラス」から「マイナス」に転じます。

コイルに流れる電流の変化から、コイル両端の電圧の変化をイメージするのはちょっと難しく感じますが、この様子は上のグラフの太い赤線と太い青線が示しています。

「経過時間:5ms」の電流波形と電圧波形の位相を比べると、電流に対して電圧はやはり「\(\displaystyle\frac{\pi}{2} (⇒90°) \) 」進んでいます。

経過時間:10ms

次は、10ms経過時の電流と電圧の波形です。

「経過時間:10ms」で電流は再び「0mA」を横切りますが、このとき電流は最大傾斜で減少しているので、コイル両端の電圧はマイナス側で最大になります。

また、電流が減少する傾斜は「経過時間:10ms」の手前までは次第に急になるのでコイル両端の電圧は下がり、「経過時間:10ms」を過ぎると電流が減少する傾斜は緩やかになり始めるのでコイル両端の電圧は上がり始めます。

その様子は、上のグラフの太い赤線と太い青線が表しています。

「経過時間:10ms」時点での電流波形と電圧波形の位相を比べると、電流に対して電圧はやはり「\(\displaystyle\frac{\pi}{2} (⇒90°) \) 」進んでいます。

経過時間:15ms

最後に15ms経過時の電流と電圧の波形です。

「経過時間:15ms」の電流は最小値の-1.41Aになりますが、このときの電流は増えも減りもしないので、コイル両端の電圧は「0V」になります。

また、「経過時間:15ms」の前後で電流は減少から増加に転じますので、電圧は「0V」をはさんで「マイナス」から「プラス」に転じます。

この様子は、上のグラフの太い赤線と太い青線が示しています。

「経過時間:15ms」の電流波形と電圧波形の位相を比べると、電流に対して電圧はやはり「\(\displaystyle\frac{\pi}{2} (⇒90°) \) 」進んでいます。

「〇〇に加えた交流電圧・電流」のまとめ

これまで、10回ほど「〇〇に加えた交流電圧・電流」について書いてきました。

これらは、これから書いていく内容の基本になるので、読まれる方が理解しやすい考え方をいくつか用意できればと思って書きました。

自分の場合、学生の時の講義や本に書かれている説明だと頭にすっと入ってこなかったところがあり、そのあとで自分の納得しやすい方法で考えるようになったと思います。

読まれる方に入り口をいくつか用意できればと思い、少ししつこいと思いましたが長々と書いてみました。

それでも、コイルとコンデンサーで電圧と電流の位相がどちらが進むか、遅れるかはときどき分からなくなります。

一般的かは分かりませんが、「やさしい電気回路」というwebサイトに下記のような覚え方があると書かれていたので、転記させていただきます。

コイル:E・L・I(エリー)⇒ 位相は電圧: Eの方が進み、電流: Iの方が遅れる。

コンデンサー:I・C・E(アイス)⇒ 位相は電流: Iの方が進み、電圧: Eの方が遅れる。

このように語呂合わせを使って覚えるのも一つの手段と思います。

次回は、経過時間に対する電圧や電流の変化ではなく、これまで「50Hz」と固定してきた周波数が変化したときに、電流の振幅がどのように変化するかを書いていこうと思います。

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