コイルに加えた交流電圧・電流〔1〕(交流電圧をコイルに印加)
先日のコンデンサーの投稿に続いて、コイルについても交流電圧や交流電流を印加したときの波形や位相比較を行います。
交流電圧源とコイルの回路図
コンデンサーの投稿では、交流電流源を接続した投稿を先に書きましたが、コイルでは交流電圧源を接続したときの投稿を最初に書きます。
個人的なイメージかもしれませんが、コンデンサーの場合は電流源を接続して考えた方が、電圧がどのように変化するか考えやすいと思っています。
コイルの場合は微妙ですが、以前にも書いたように「コイルに流れる電流は急に止まらない」ので、コイルに流れる電流が一瞬で変化すると電圧は無限大になりますが、コイルに加えた電圧が一瞬で変化しても電流は無限大にはならないので、考えやすいように思います。
ということで、今回は下の回路について考えていきます。
電圧とコイルと電流の関係式
交流の電圧と電流と「インダクタンス:\(L\)」「抵抗:\(R\)」「キャパシタンス:\(C\)」の関係は、「コンデンサーに加えた交流電圧・電流〔1〕」にも書いた下の式で表せます。
$$V(t)=L\displaystyle\frac{dI(t)}{dt}+RI(t)+\displaystyle\frac{1}{C}\int I(t)dt$$
コイルの式だけを書き出すと、下の式になります。
$$V(t)=L\displaystyle\frac{dI(t)}{dt}$$
この式の両辺を、時間で積分すると下の式になります。
$$\int V(t) dt=L I(t)$$
この式を、交流電圧と「インダクタンス:\(L\)」から交流電流を計算する「\(I(t)=\)」の形に変形します。
$$L I(t)=\int V(t) dt$$
$$I(t)=\displaystyle\frac{1}{L} \int V(t) dt$$
この式に「\(V(t)=V_{peak} \sin (\omega t) \) 」を入れます。
$$I(t)=\displaystyle\frac{1}{L} \int V_{peak} \sin (\omega t) dt$$
時間「\(t\)」が変化しても変わらない「\(V_{peak}\)」を積分の前に出します。
$$I(t)=\displaystyle\frac{V_{peak}}{L} \int \sin (\omega t) dt$$
積分の公式「\( \int \sin ax dx=-\displaystyle\frac{\cos ax}{a}(+C)\)」を使用します。
$$I(t)=\displaystyle\frac{V_{peak}}{L}✕ \int \sin (\omega t) dt$$
$$I(t)=\displaystyle\frac{V_{peak}} {L}✕ \left (-\displaystyle\frac{\cos (\omega t)} {\omega} \right) $$
$$I(t)=-\displaystyle\frac{V_{peak}} {\omega L} \cos (\omega t)$$
コンデンサーのときと同じように、この式と抵抗の式「\(I(t)=\displaystyle\frac{V_{peak}}{R} \sin (\omega t) \) 」を見比べると、「\(R\) 」に相当するのが「\(\omega L\) 」になることが分かります。
ここでも「プラスとマイナス」、「\(\sin\)と\(\cos\) 」の違いは位相に関係します。
計算式に具体的な数値を入れてグラフを作成
ここからは、具体的な数字を入れていきます。
「抵抗」のときと同じ「電圧の実効値:\(V=100V_{rms}\) 」⇒「\(V_{peak}=100\sqrt2 V\) 」を使用します。
前の項で、「\(R\) 」に相当するのが「\(\omega L\) 」と書きましたが、コンデンサーのときと同じように下記の条件にします。
$$\omega L=R=100$$
「周波数:\(f=50Hz\)」で、「抵抗値:\(R=100Ω\)」相当になる「コイルのインダクタンス:\(L\)」は下のように計算できます。
$$\omega L=R=100$$
$$L=\displaystyle\frac{100}{\omega}$$
$$L=\displaystyle\frac{100}{2\pi f}$$
$$L=\displaystyle\frac{100}{2\pi 50}$$
$$L=\displaystyle\frac{100}{100\pi}$$
$$L=\displaystyle\frac{1}{\pi}≒0.32$$
「インダクタンス:\(L\)」は約0.32H(ヘンリー)になります。
それでは、\(I(t)\)を計算していきます。
$$I(t)=-\displaystyle\frac{V_{peak}} {\omega L} \cos (\omega t)$$
$$I(t)=-\displaystyle\frac{100\sqrt2} {100} \cos (2\pi f t)$$
$$I(t)=-\sqrt2 \cos (2\pi 50 t) $$
$$I(t)=-\sqrt2 \cos (100\pi t) $$
$$I(t)≒-1.41 \cos (100\pi t) $$
この式は、「時間:\(t\) 」から「電流値:\(I(t)\) 」を計算する式なので、横軸を時間、縦軸を電流にした赤い線のグラフを、青い線の電圧のグラフの下に置きました。
左の単位円のグラフは位相を表していて、時間の経過とともに反時計回りに回るので、青い電圧の位相を基準にすると、赤い電流の位相は「\(\displaystyle\frac{\pi}{2} (rad)=90(deg)\) 」遅れていることが分かります。
次回は、この「電圧」と「電流」の関係を波形イメージで説明していこうと思います。
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