電気回路_コイルのエネルギー〔3〕
今回は、電流が「ゼロ」から「\(I\)」A(アンペア)まで増えたときに、コイルに蓄えられるエネルギーを計算します。
コイルのエネルギーの計算方法
前回は、コイルに流れる電流が増え始めた直後の微小な時間「\(Δt\)」の間に、コイルに蓄えられるエネルギーを計算しました。
その内容を簡単に書くと、下のグラフの左端の微小な時間「\(Δt\)」での電流、電圧、時間を掛け算して、コイルには\(\left(Δi✕L\displaystyle\frac{Δi}{Δt}✕Δt\right)\)J(ジュール)のエネルギーが蓄えられることを求めました。
今回は、最初の微小な時間「\(Δt\)」のエネルギーを計算してから、次の「\(Δt\)」、次の「\(Δt\)」と小刻みにエネルギーの計算式を求め、最後に全てを足し合わせて全体のエネルギーを計算する式を求めます。
そのために電流が増加する時間をn分割し、最初の電流の範囲を(1)、2番目の電流の範囲を(2)、n番目の電流の範囲を(n)とすると、それぞれの電流の範囲は下のようになります。
(1)\(0Δi\) ~ \(1Δi\)
(2)\(1Δi\) ~ \(2Δi\)
(3)\(2Δi\) ~ \(3Δi\)
:
(\(n\))\((n-1)Δi\) ~ \(nΔi\)
それでは、(1)から(n)のエネルギーの計算式を求めて足し合わせます。
コイルのエネルギーの計算式
まず、(1)から(n)のエネルギーを計算する式を書きます。
エネルギーは、電流と電圧と時間のかけ算で求まるので、下記になります。
(1)\(Δi✕L\displaystyle\frac{Δi}{Δt}✕Δt=Δi✕LΔi=LΔi^2\)
(2)\(2Δi✕L\displaystyle\frac{Δi}{Δt}✕Δt=2Δi✕LΔi=2LΔi^2\)
(3)\(3Δi✕L\displaystyle\frac{Δi}{Δt}✕Δt=3Δi✕LΔi=3LΔi^2\)
:
(n)\(3Δi✕L\displaystyle\frac{Δi}{Δt}✕Δt=nΔi✕LΔi=nLΔi^2\)
エネルギーの計算式から、時間が消えました。
この意味は、コイルに流れる電流が早く増えてもゆっくり増えても、増えた電流が同じならコイルに蓄えられるエネルギーは変わらないということです。
コイルに蓄えられるエネルギー:\(E\)を計算する式を下に示します。
$$E=LΔi^2+2LΔi^2+3LΔi^2+…+nLΔi^2$$
$$=(1+2+3+…+n)LΔi^2$$
過去の投稿に書いた「\(1+2+3+…+n=\displaystyle\frac{n(n+1)}{2}\)」の公式を使うと、上の式は下のようになります。
$$E=\displaystyle\frac{n(n+1)}{2}LΔi^2$$
「\(Δi=\displaystyle\frac{I}{n}\)」を上の式に入れます。
$$E=\displaystyle\frac{n(n+1)}{2}L\left(\displaystyle\frac{I}{n}\right)^2$$
$$=\displaystyle\frac{n(n+1)}{2n^2}LI^2$$
$$=\displaystyle\frac{1+\displaystyle\frac{1}{n}}{2}LI^2$$
ここで\(n\)→\(∞\)にします。
$$E=\lim_{n \to ∞}\displaystyle\frac{1+\displaystyle\frac{1}{n}}{2}LI^2$$
$$=\displaystyle\frac{1}{2}LI^2$$
この計算には、「\(\lim_{n \to ∞}\left(\displaystyle\frac{1}{n}\right)=0\)」になることを使っています。
ここまでの式を整理すると、下のように書けます。
$$E=\lim_{n \to ∞}\sum_{k=1}^{n}kL\left(\displaystyle\frac{I}{n}\right)^2$$
$$=\lim_{n \to ∞}(1+2+3+…+n)L\left(\displaystyle\frac{I}{n}\right)^2$$
$$=\lim_{n \to ∞}\displaystyle\frac{n(n+1)}{2}L\left(\displaystyle\frac{I}{n}\right)^2$$
$$=\lim_{n \to ∞}\displaystyle\frac{1+\displaystyle\frac{1}{n}}{2}LI^2$$
$$=\displaystyle\frac{1}{2}LI^2$$
コイルに蓄えられているエネルギーは、コイルのインダクタンス:L(H_ヘンリー)と電流:I(A_アンペア)から計算できることが分かりました。
次回は、コンデンサーのエネルギーと比較した記事を書こうと思います。
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