抵抗に加えた交流電圧・電流〔1〕(交流電圧を抵抗に印加)

ここからは、交流の電圧や電流に、コンデンサやコイルを接続したときの話を書いていくのですが、少し分かりづらい点があると思うので、まずは分かりやすい抵抗について書きます。

話の進め方

身近な話の方がイメージしやすいと思うので、今回も家庭用電源のAC100Vの話を書きます。

過去の投稿の繰り返しになりますが、家庭用電源のAC100Vの電源プラグには「N」と「L」があります。

「N」は接地されているので基本的には変化せず、「L」の方は「+141V」から「-141」Vまで、下のグラフの赤い曲線のように上下します。

ご存じかもしれませんが、家庭用電源の「電力」には「有効電力」「無効電力」「皮相電力」の3種類があります。

これら3種類の「電力」の違いには、電圧と電流の「位相」が関係します。

最終的に、この辺りの話をうまく書いていければいいなと思います。

それではまず、AC100Vの交流電圧に100Ωの抵抗を接続したときの電圧と電流の関係から始めます。

想定する回路(交流電圧源+抵抗)

これからの説明では、交流電圧を「VAC」、抵抗を「R」、交流電流を「IAC」としますが、具体的な数字の方がイメージしやすいと思います。

なので、「VAC」「R」「IAC」には具体的な数値も入れていきます。

まず、ここで想定する回路図は下記になります。

具体的な数値として、まず「VAC」は100Vとします。

次に「R」は100Ωとします。

そうすると「IAC」は、オームの法則を使って下のように計算できます。

$$I_{AC}=\displaystyle\frac{V_{AC}}{R}=\displaystyle\frac{100}{100}=1$$

この計算から、「IAC」は1Aになります。

ちなみに、この交流の「100V」や「1A」は「実効値」とよばれるもので、「実効値」であることを明確にするときは「100Vrms」や「1Arms」と書きます。

「実効値」の話は、「直流と交流の違い」で書いたと思っていましたが、書き忘れていたようです。

近いうちにこの「実効値」についても書こうと思います。

「VAC」の100Vは実効値なので、「VAC」を変化する波形として考えるには、前の項のグラフの赤い曲線を表す式が必要です。

赤い曲線を表す式は、「直流と交流の違い」で求めた下の式になります。

$$V_{AC}(t)=V_{peak} \sin(\omega t)$$

回路図の表記も合わせておきます。

この式に、具体的な数値を入れると下記になります。

$$V_{AC}(t)=V_{peak} \sin(\omega t)$$

$$=\sqrt{2}V_{AC} \sin(2\pi ft)$$

$$=100\sqrt{2} \sin(2\pi 50t)$$

$$=100\sqrt{2} \sin(100\pi t)$$

$$≒141 \sin(100\pi t)$$

ちなみに交流の周波数「f」は、前の項のグラフに書いた50Hzです。

また、上の式の変形には「直流と交流の違い」で書いた「\(V_{peak}=\sqrt{2}V_{AC}(≒141)\)」や「\(\omega=2\pi f\)」の式も使用しました。

(「直流と交流の違い」では「\(V_{peak}=\sqrt{2}V_{DC}\)」でしたが、「\(V_{AC}=V_{DC}=100V\)」なので同じと思ってください。)

交流電圧:VAC(t)に抵抗:Rを接続したときの交流電流:IAC(t)

さて、それでは抵抗「R」に交流電圧「VAC(t)」を加えたときに、抵抗「R」に流れる電流「IAC(t)」を考えていきます。

まず、抵抗「R」に加える交流電圧「VAC(t)」の波形をグラフで表すと下記になります。

右のグラフは、先ほど書いた下の式をグラフ化したものです。

$$V_{AC}(t)=V_{peak} \sin(\omega t)$$

$$=100\sqrt{2} \sin(100\pi t)$$

$$≒141 \sin(100\pi t)$$

左の円グラフは、右のグラフの「\(V_{peak} \sin(\omega t)\)」で描かれる正弦波(sin波)に対応した単位円で、経過時間「t」が進んだり、遅れたりすることで変化する「角度」を表します。

この「角度」は、正弦波など周期性のある波では「位相」ということが多いので、「位相」とよぶことにします。

上の図で、経過時間「t」が「0ms」のときの「位相」は「0rad」で、「5ms」のときは「100πt=100π✕0.005」を計算して「\(\displaystyle\frac{\pi}{2}\) rad」になります。

次に、交流電圧「VAC(t)」を加えた抵抗「R」に流れる交流電流「IAC(t)」の波形を下のグラフに示します。

このグラフは、オームの法則で求めた下の式をグラフ化したものです。

$$I_{AC}(t)=\displaystyle\frac{V_{AC}(t)}{R}$$

$$=\displaystyle\frac{V_{peak} \sin(\omega t)}{R}$$

$$=\displaystyle\frac{100\sqrt{2} \sin(100\pi t)}{100}$$

$$=\sqrt{2} \sin(100\pi t)$$

このグラフを見ると、経過時間「t」が「0ms」のときに「位相」が「0rad」で、交流電圧「VAC(t)」と同じであることが分かります。

交流電圧「VAC(t)」と、それに接続した抵抗「R」に流れる交流電流「IAC(t)」の位相が同じということを覚えておいてください。

次回は電圧と電流を入れ替えて、交流電流「IAC(t)」を抵抗「R」に接続したときに、抵抗「R」の両端に生じる交流電圧「VAC(t)」と交流電流「IAC(t)」の関係がどうなるかを書く予定です。

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