交流電圧を加えたコンデンサーに流れる電流の周波数特性(1)

ここでは、コンデンサーに接続した交流電圧源の周波数が、初期値の「\(50Hz\) 」から「\(5Hz\) 」や「\(500Hz\) 」に変化したときに、コンデンサーに流れる電流がどう変化するかを書いていきます。

想定する回路と電圧波形

交流電圧源に接続したコンデンサーに流れる電流の変化を考えるので、回路図は下記になります。

コンデンサーに接続する交流電圧源の式は下記です。

$$V(t)=V_{peak} \sin (\omega t) $$

電圧値をこれまでと同じ「\(100V_{rms}\) (実効値)」にすると、「\(V_{peak}=100 \sqrt2≒141(V)\) 」になります。

周波数は、初期値を「\(f=50Hz\) 」とします。

これらの値を上の式に入れると下記になります。

$$V(t)=V_{peak} \sin (\omega t) $$

$$V(t)=141 \sin (2\pi ft) $$

$$V(t)=141 \sin (2\pi 50t) $$

$$V(t)=141 \sin (100\pi t) $$

この式をグラフ化すると、交流電圧波形は下のようになります。

グラフの電圧値を計算するときの例として、「\(t=5ms=0.005s\) 」のときの電圧値を計算してみます。

$$V(t)=141 \sin (100\pi t) $$

$$V(t)=141 \sin (100\pi ✕0.005) $$

$$V(t)=141 \sin (0.5\pi) $$

$$V(t)=141✕1=141(V) $$

ちなみに「\(0.5\pi=90°\) 」なので、「\(\sin (0.5\pi) =\sin (90°) =1\) 」です。

余談ですが、パソコンの電卓などを使って「\(\sin (90°)\) 」を計算するときは、角度の単位を「DEG(ディグリー)」に設定します。

「\(\sin (0.5\pi)\) 」を計算するときは、角度の単位を「RAD(ラジアン)」に設定します。

単位が「RAD(ラジアン)」のときは、「\(\sin (0.5\pi) ≒\sin (1.5708) \) 」というように、「\(0.5\pi\) 」ではなく「\(1.5708\)」と具体的な数字を入れても近似値計算ができます。

Excelを使って計算するときは、「\(\sin ( )\) 」のカッコ内の単位は「RAD(ラジアン)」一択なので、セルの中に「=SIN(0.5*PI()) 」や「=SIN(PI()/2) 」と書くと計算できます。

Excelでは、計算に「\(\pi\)」を使うときは「PI()」と書きます。

コンデンサーに流れる電流波形

次に、このときの電流波形を計算する式を導きます。

過去の投稿と同様、「電圧」と「電流」と「コンデンサーの容量値」の関係式から、「電流」を「電圧」と「コンデンサーの容量値」で表す式を求めます。

$$V(t)=\displaystyle\frac{1}{C}\int I(t)dt$$

$$\displaystyle\frac{dV(t)}{dt}=\displaystyle\frac{1}{C} I(t)$$

$$C \displaystyle\frac{dV(t)}{dt}=I(t)$$

$$I(t)=C \displaystyle\frac{dV(t)}{dt}$$

上の式に「\(V(t)=V_{peak}\sin(\omega t)\)」を入れて計算を続けます。

$$I(t)=C \displaystyle\frac{dV(t)}{dt}$$

$$I(t)=C \displaystyle\frac{d(V_{peak}\sin(\omega t))}{dt}$$

$$I(t)=CV_{peak} \displaystyle\frac{d (\sin (\omega t))}{dt}$$

$$I(t)=\omega CV_{peak} \cos (\omega t) $$

この式は、下のように書いた方が電圧、電流、容量値の関係をイメージしやすいかもしれません。

$$I(t)=\displaystyle\frac{V_{peak}}{\displaystyle\frac{1}{\omega C}} \cos (\omega t) $$

これで「電圧」と「コンデンサーの容量値」から「電流」を計算する式が求まりました。

次にコンデンサーの容量値ですが、これまでコンデンサーの容量値は「\(f=50Hz\) 」のときに「\(\displaystyle\frac{1}{\omega C} =100Ω\) 」になる値にしていましたが、今回は「\(f=50Hz\) 」のときに「\(\displaystyle\frac{1}{\omega C} =141Ω\) 」になる値にします。

具体的には容量値を「31.8μF」から「22.5μF」に変更します。

そうすることで「\(f=50Hz\) 」のとき、「\(I_{peak}=1.41A\) 」が「\(I_{peak}=1.00A\) 」になるのでグラフが見やすくなります。

変更する理由は、それだけです。

それでは横軸を経過時間、縦軸を電流と電圧にしたグラフを下に示します。

電流は赤い線で、目盛りは左の縦軸に書いていますが、電流の振幅は1A(アンペア)です。

青い線は電圧で、目盛りは右の縦軸に書いていますが、電圧の振幅は141V(ボルト)です。

また、電圧波形と電流波形の位相に着目すると、電圧に比べて電流は90度進んでいます。

周波数が変化したときの波形の変化

次に、前の項と同じ条件で、交流電圧源の周波数を「\(f=50Hz\) 」の1/10の「\(f=5Hz\) 」と、10倍の「\(f=500Hz\) 」にしたときの電流波形をグラフ化します。

周波数が変わったときの電流波形の違いをイメージできるよう、グラフの縦軸と横軸の値は固定とします。

電流波形のグラフは、上から順に「\(f=500Hz\) 」「\(f=50Hz\) 」「\(f=5Hz\) 」の周波数で並べました。

【500Hz】

【50Hz】

【5Hz】

これだと、細かい部分は読み取れませんが、周波数が変わるとコンデンサーに流れる電流が大きく変化することはイメージできると思います。

ちなみに、電流の振幅は下記になります。

・\(I_{peak}=10A\) @500Hz

・\(I_{peak}=1A\) @50Hz

・\(I_{peak}=0.1A\) @5Hz

交流波形の繰返し周期は下記です。

・\(T=2ms\) @500Hz

・\(T=20ms\) @50Hz

・\(T=200ms\) @5Hz

これらのグラフから、周波数が二桁変化するとコンデンサーに流れる電流値が大きく変化することは分かると思いますが、周波数と電流の関係を説明するには少し難しいです。

そのため、次回は一桁の周波数変化の間に2つの周波数を追加します。

具体的には、下記の周波数のグラフを作成して説明を続けます。

・\(f=500Hz\)

・\(f=200Hz\) ⇒ 追加

・\(f=100Hz\) ⇒ 追加

・\(f=50Hz\)

・\(f=20Hz\) ⇒ 追加

・\(f=10Hz\) ⇒ 追加

・\(f=5Hz\)

グラフの数が増えますが、分かりやすくなればと思います。

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