交流電圧を加えたコンデンサーと抵抗に流れる電流〔3〕(周波数変化時の波形と振幅/位相グラフ)
前回の〔2〕の投稿(振幅と位相を一つのグラフに表示)では、極座標を使って電流の振幅と位相を一つのグラフに表しましたが、今回は周波数が5Hzから500Hzまで変化したときに、その極座標がどう変化するかを、電流波形も含めて書きます。
使用する回路と電流波形と振幅/位相グラフの見かた
それでは、前回のおさらいもかねて最初に「回路図」と、「電流波形」「振幅/位相」のグラフの見かたを書きます。
回路図は、下の図のように左側に電圧源があり、右側のコンデンサーと抵抗に接続されています。
電圧振幅などの値は、〔2〕のときと同じ下の値になります。
・電圧振幅(Vpeak):141V
・抵抗値(R):141Ω
・容量値(C):22.5μF
周波数(f):50Hzのときに、この回路に流れる電流の波形を左下に示しますが、抵抗に流れる電流は青色、コンデンサーに流れる電流は赤色、2つの電流を足し合わせた合成電流は紫色の線になります。
右の極座標のグラフは、3つの電流波形の振幅と位相を矢印で表しています。
抵抗とコンデンサーに流れる電流の振幅はどちらも「1A」なので、青色と赤色の矢印の長さは同じになります。
ここで、電流波形の位相は、電圧波形の位相が基準になります。
抵抗に加えた交流電圧と、その抵抗に流れる交流電流の位相は同じになるので、青色の矢印を極座標の原点から右向きに描き、この向きを位相「0 deg(度)」とします。
左の波形グラフでは、青色の線が「0A@0ms」のとき、赤色の線は「1A@0ms」になっていて、二つの波形を見比べると、赤色の線の位相が「90 deg(度)」先行していることが分かります。
これを、右の極座標に赤色の矢印で描くと、原点を中心に反時計回りに「90 deg(度)」回転して真上を向きます。
この赤い矢印は、青い矢印に対して位相が「90 deg(度)」進んでいると表現します。
最後は紫色の矢印ですが、見やすいように上の絵をもう一度下に貼り付けます。
抵抗とコンデンサーに流れる電流を足し合わせた電流波形は、左側のグラフの紫色の線になります。
この電流の振幅を計算すると「1.41A」になりますが、右の極座標のグラフから、紫色の矢印の長さ(電流振幅)は「三平方の定理」を使って下記のように計算できます。
\(「Ir \sin (\omega t)+Ic \cos(\omega t)」\) の電流振幅
$$=\sqrt{Ir^2+Ic^2}=\sqrt{1^2+1^2}=\sqrt{1+1}=\sqrt{2}=1.41(A)$$
この紫色の波形の位相は、グラフから「45 deg(度)」と分かりますが、前回の〔2〕の投稿で書いたように、「\(\arctan x \ (=\tan^{-1} x)\)」からも計算できます。
$$\theta_{r+c} =\arctan \left(\displaystyle\frac{Ir}{Ic} \right) =\arctan \left(\displaystyle\frac{1}{1} \right) =\arctan (1)=45(deg)$$
おさらいが長くなりましたが、ここからが今回の本題になります。
周波数:5~50Hzでの電流波形と電流振幅/位相
前回の〔2〕では、信号の周波数が50Hzのときについて書きましたが、ここでは周波数が50Hzから5Hzまで低下するとどう変化するかを書きます。
周波数を50Hzから、20Hz、10Hz、5Hzと低くしていきます。
左のグラフの横軸は、周波数が変化しても見た目の波形の周期が変化しないよう、時間の目盛りを変えているので注意してください。
【50Hz(周期:20ms)】
このグラフは、上のグラフと同じです。
「周期:20ms」とは、左のグラフの波形が「20ms」の周期で繰り返すという意味で、0msから20msまでが一つの周期で、その前後はその繰り返しになります。
【20Hz(周期:50ms)】
周波数が50Hzから20Hzへと5分の2に低下すると、左のグラフの波形の繰り返し周期は20msから2.5倍の50msまで長くなります。
コンデンサーに流れる電流を表す赤い線の電流振幅は、周波数の低下で電気抵抗が2.5倍になるので、5分の2の0.4Aに減ります。
そのため、赤い線と青い線を足し合わせた紫色の線の振幅も下がり、青い線に近い波形になります。
具体的な電流振幅や位相の値は、最後に表にまとめます。
【10Hz(周期:100ms)】
周波数が50Hzから10Hzへと5分の1に低下すると、左のグラフの波形の繰り返し周期は20msから5倍の100msまで長くなります。
コンデンサーの電気抵抗は周波数が下がったことで5倍に増加し、電流振幅は5分の1の0.2Aに減ります。
こうなると、紫色の線は、さらに青色の線に近づいています。
【5Hz(周期:200ms)】
周波数が50Hzから5Hzへと10分の1に低下すると、左のグラフの波形の繰り返し周期は20msから10倍の200msまで長くなります。
コンデンサーの電気抵抗は10倍に増加し、電流振幅は10分の1の0.1Aに減ります。
ここまでくると、紫色の線と青色の線はほとんど重なって見えます。
周波数:50~500Hzでの電流波形と電流振幅/位相
今度は、周波数を50Hzから、100Hz、200Hz、500Hzと高くしていきます。
今回も左のグラフの横軸は時間の目盛りを変えていますが、それに加えてコンデンサーに流れる電流が増えるので、左のグラフは縦軸、右のグラフは縦軸と横軸を変えています。
ちょっと分かりづらいと思いますが、青色の電流振幅は変化しないので、それと比較してもらえればと思います。
【50Hz(周期:20ms)】
このグラフは最初のグラフと同じで、この後のグラフとの比較用に貼り付けました。
【100Hz(周期:10ms)】
周波数が50Hzから100Hzに上昇して2倍になると、左のグラフの波形の繰り返し周期は20msから2分の1の10msになります
コンデンサーの電気抵抗は2分の1に低下し、電流振幅は2倍の2Aに増えてグラフからはみ出すので、左のグラフの縦軸と、右のグラフの縦軸と横軸の電流値を見直しています。
青い線で描いている抵抗に流れる電流振幅は周波数で変化しないので、青い線に比べて赤い線や紫色の線がどのように変化しているかを見てください。
左のグラフでは、紫色の線が赤色の線に近づいてきていることが分かります。
【200Hz(周期:5ms)】
周波数が50Hzから200Hzに上昇して4倍になると、左のグラフの波形の繰り返し周期は20msから4分の1の5msになります。
コンデンサーの電気抵抗は4分の1に低下し、電流振幅は4倍の4Aに増えるので、左のグラフの縦軸の電流値をさらに見直しています。
変化していない青色の電流振幅がかなり小さく見えるくらい、コンデンサーに流れる電流の振幅が大きくなっていることが分かります。
【500Hz(周期2ms)】
周波数が50Hzから500Hzに上昇して10倍になると、左のグラフの波形の繰り返し周期は20msから10分の1の2msになります。
コンデンサーの電気抵抗は10分の1に低下し、電流振幅は10倍の10Aに増えるので、左のグラフの縦軸と、右のグラフの縦軸と横軸の電流値を変更しています。
ここまで、周波数が変化したときの電流波形、電流振幅/位相のグラフを描きましたが、それぞれの周波数での電流振幅と位相の値を表にまとめます。
周波数変化による電流振幅と位相の変化
下の表に、各周波数での電流振幅と位相を示します。
「周波数:50Hz」のとき、抵抗とコンデンサーに流れる電流の「電流振幅」と「位相」は「1.41A」と「45deg」ですが、「周波数:5Hz」では抵抗の「電流振幅」と「位相」に近づき、「周波数:500Hz」ではコンデンサーの「電流振幅」と「位相」に近づきます。
次回はこの表の内容を、「周波数」を横軸にして、縦軸を「電流振幅」と「位相」にしたグラフを描き、「周波数」で「電流振幅」と「位相」がどう変化するかを書く予定です。
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