微分や積分の話【微分(3)】
前回は、山の標高を計算する式から、山の傾斜を計算する式を求めたので、今回はそれと微分の関係を書いてみます。
山の標高と傾斜の関係
これまで、山の登りと下りの話について書いてきました。
最初は山の登山口から、頂上に向かっての登山です。
登山中の「標高」と坂道の「傾斜」は、山に登っていくと変化します。
今回の山は、最初は急斜面ですが、山頂に近づくにつれて緩斜面になっていきます。
登山とともに変化する「標高」と「傾斜」を、左下の登山口を基点(0m地点)として、「水平方向の移動距離」から計算する下の計算式を前回と前々回で求めました。
標高:\(h=f(d)=100-\displaystyle\frac{(d-1000)^2}{10000}\)
傾斜:\(s=\displaystyle\frac{1}{5000}(1000-d)\)
山頂を過ぎると下り坂になりますが、下りもこの式で計算できます。
この「傾斜」は、微小な「移動」と、それにともなう微小な「標高」の変化の割り算(「標高の変化量」÷「移動の変化量」)で求まるので、下の式になります。
$$s=\lim_{h \to 0}\displaystyle\frac{f(d+h)-f(d)}{(d+h)-(d)}$$
このように、「標高」の計算式から「傾斜」の計算式を導くことが「微分」の一例です。
数学的には正確な表現ではないかもですが・・。
逆に、「傾斜」を計算する式から「標高」を計算する式を導くことは「積分」になります。
これも計算してみましょう。
「傾斜」から「標高」を計算
下のグラフは、前回求めた「傾斜」の計算式をグラフ化したものですが、「標高」は「傾斜」に「移動距離」を掛けると計算できます。
「微分や積分の話【積分(2)】」で、「速度」から「走行距離」を計算したときと同じように、今回は「移動距離」を「\(\displaystyle\frac{1}{n}\)」して計算したのちに、「\(n\)」を無限大にして「標高」計算していきます。
上のグラフを少し説明しておきます。
「水平方向の移動距離」の単位はメートルですが、「標高」と区別するために「水平方向の移動距離」の単位は「\(m_d\)」、「標高」の単位は「\(m_h\)」としました。
横軸は「水平方向の移動距離」で、「\(0~2000\)」\(m_d\)です。
この「\(2000\)」\(m_d\)を「\(n\)」分割するので、ひと区間は「\(\displaystyle\frac{2000}{n}\)」\(m_d\)になります。
そして、その一つひとつの区間の「傾斜:\(s\)」は、グラフの赤い枠の計算式「\(s=\displaystyle\frac{1}{5000}\left(1000-\displaystyle\frac{2000}{n}k\right)\)」\(m_h/m_d\)で求まります。
次に、同じように一つひとつの区間の「標高:\(h\)」は、青い枠の計算式「\(h=s\left(\displaystyle\frac{2000}{n}\right)\)」\(m_h\)で求まります。
今回は「水平方向の移動距離」の「\(2000\)」\(m_d\)を一般化して「\(d\)」\(m_d\)とします。
そうすると、ひと区間は「\(\displaystyle\frac{d}{n}\)」\(m_d\)、赤い枠の計算式は「\(s=\displaystyle\frac{1}{5000}\left(1000-\displaystyle\frac{d}{n}k\right)\)」\(m_h/m_d\)、青い枠の計算式は「\(h=s\left(\displaystyle\frac{d}{n}\right)\)」\(m_h\)になります。
それでは「水平方向の移動距離:\(d\)」\(m_d\)から「標高:\(h\)」\(m_h\)を計算する式を立てます。
$$h=\lim_{n \to ∞}{\sum_{k=1}^{n} \displaystyle\frac{1}{5000}\left(1000-\displaystyle\frac{d}{n}k\right)}\left(\displaystyle\frac{d}{n}\right)$$
$$=\displaystyle\frac{1}{5000}\lim_{n \to ∞}\sum_{k=1}^{n} \left(1000\left(\displaystyle\frac{d}{n}\right)-k\left(\displaystyle\frac{d}{n}\right)^2\right)$$
$$=\displaystyle\frac{1}{5000}\lim_{n \to ∞} \left( \left(1000\left(\displaystyle\frac{d}{n}\right)-1\left(\displaystyle\frac{d}{n}\right)^2\right)+\left(1000\left(\displaystyle\frac{d}{n}\right)-2\left(\displaystyle\frac{d}{n}\right)^2\right)+・・+\left(1000\left(\displaystyle\frac{d}{n}\right)-n\left(\displaystyle\frac{d}{n}\right)^2\right)\right)$$
$$=\displaystyle\frac{1}{5000}\lim_{n \to ∞}\left(\left(1000\left(\displaystyle\frac{d}{n}\right)+1000\left(\displaystyle\frac{d}{n}\right)+・・+1000\left(\displaystyle\frac{d}{n}\right)\right)-\left(1\left(\displaystyle\frac{d}{n}\right)^2+2\left(\displaystyle\frac{d}{n}\right)^2+・・+n\left(\displaystyle\frac{d}{n}\right)^2\right)\right)$$
$$=\displaystyle\frac{1}{5000}\lim_{n \to ∞}\left(\left(1000\left(\displaystyle\frac{d}{n}\right)×n\right)-\left(\left(1+2+・・+n\right)\left(\displaystyle\frac{d}{n}\right)^2\right)\right)$$
$$=\displaystyle\frac{1}{5000}\lim_{n \to ∞}\left(\left(1000d\right)-\left(\left(\displaystyle\frac{n(n+1)}{2}\right)\left(\displaystyle\frac{d}{n}\right)^2\right)\right)$$
$$=\displaystyle\frac{1}{5000}\lim_{n \to ∞}\left(1000d-\displaystyle\frac{1(1+\displaystyle\frac{1}{n})}{2}d^2\right)$$
$$=\displaystyle\frac{1}{5000}\left(1000d-\displaystyle\frac{1(1+0)}{2}d^2\right)$$
$$=\displaystyle\frac{1}{5000}\left(1000d-\displaystyle\frac{1}{2}d^2\right)$$
$$=\displaystyle\frac{1}{5}d-\displaystyle\frac{1}{10000}d^2$$
今回は説明を省略しましたが、計算の途中に「微分や積分の話【積分(1)】」の「1からnまでの和を求める公式」を使用しました。
「\(1+2+3+・・・+n=\displaystyle\frac{n(n+1)}{2}\)」という公式です。
ここで求めた式を使って「水平方向への移動距離:\(d\)」を横軸、「標高:\(h\)」を縦軸にしてグラフを書くと下のようになります。
これは、最初の山の形と同じです。
「水平方向への移動距離:\(d\)」から「標高:\(h\)」を求める計算式を微分すると「傾斜:\(s\)」が求まりました。
その「傾斜:\(s\)」を求める計算式を積分すると「標高:\(h\)」を求める計算式が求まりました。
積分で求めた\(\left(h=\displaystyle\frac{1}{5}d-\displaystyle\frac{1}{10000}d^2\right)\)の計算式と、最初の\(h=100-\displaystyle\frac{(d-1000)^2}{10000}\)の計算式は一見、別の計算式に見えるので、最初の式を変形して同じ式かを確認してみます。
$$h=100-\displaystyle\frac{(d-1000)^2}{10000}$$
$$=100-\displaystyle\frac{d^2-2×1000d+1000000}{10000}$$
$$=100-\left(\displaystyle\frac{1}{10000}d^2-\displaystyle\frac{2}{10}d+100\right)$$
$$=\displaystyle\frac{1}{5}d-\displaystyle\frac{1}{10000}d^2$$
二つの標高を求める式は、同じ計算式であることが確認できました。
微分の公式(一部)
微分の公式で、よく使いそうなものをいくつか書いておきます。
下の式の左辺に\((f(x))'\)と書いていますが、これは関数:\(f(x)\)を微分するという記号で、右辺が関数:\(f(x)\)を微分した式になります。
\((x^a)'=ax^{a-1} (aは任意の実数)\)
\((\sin x)'=\cos x\)
\((\cos x)'=-\sin x\)
\((e^x)'=e^x\)
今回の小高い山の式を例にとると、標高を表す式は下記になります。
$$h=100-\displaystyle\frac{(d-1000)^2}{10000}=\displaystyle\frac{1}{5}d-\displaystyle\frac{1}{10000}d^2$$
この式を、上の微分の公式を使って微分することで傾斜を求めます。
$$s=h'=\left(\displaystyle\frac{1}{5}d-\displaystyle\frac{1}{10000}d^2\right)'$$
$$=\displaystyle\frac{1}{5}-\displaystyle\frac{2}{10000}d$$
$$=\displaystyle\frac{1}{5}-\displaystyle\frac{1}{5000}d$$
$$=\displaystyle\frac{1}{5000}(1000-d)$$
このように、\(h\)を微分することで、簡単に傾斜:\(s=\displaystyle\frac{1}{5000}(1000-d)\)の式を求めることができます。
次回は、これまで書いてきた微分と積分の関係について整理しようと思います。
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